【2019年11月今月の提案➂】体験から学んだ私のマネジメント論 第3回
▲須磨離宮公園の薔薇の花シリーズです。今回は「ダブルデライト」です。
離宮公園ももうすぐ紅葉の見ごろだそうで、抗がん剤を飲み終わったなら月末に出かけてみようかと思っています。
目的と手段・方法の区別
■初めにこれから書くマネジメント論を次のフレームワークを念頭に書きます。
①言葉の意味(定義らしきもの) ②目的や理由 ➂具体的な手段・方法
④実例 ⑤注意点、今後の課題等。
●表題のことに気づいたのは今から40年以上前のことです。20代だった私はそれまでマネジメントについてしっかり勉強をしたことはありませんでした。高校を卒業して勤めて4年、22歳である電子部品販売店の店長になりました。
●記憶は曖昧ですが、我流で上司のサポートを受けながら必死で仕事をこなしていたと思います。毎月の売上予算の達成が第一義で、結果として商品ロスや粗利益予算、純利益予算の達成を問われていました。目標はあくまで命じられた数値予算の達成でした。
●あとは率先垂範(主に商品知識の習得と販売活動)をしながら部下の管理・統率が仕事でした。マネジメントといえば休みのローテーションや休憩時間の順守を促すこと、任せていた担当ごとの発注管理と陳列をチェックすること、それに部下同士の喧嘩の仲裁ぐらい(笑)だったと記憶しています。
●ですから表題の「目的と手段・方法の区別」や目的と目標の違いに考えが及んだのは20代後半になって本社へ転勤になってからです。そこで当時の社長が推進するパートナーシャフト経営の推進事務局や教育担当の仕事をするようになって、はじめてマネジメントとは何かについて知識を得る勉強をしました。
●そこで最初に共感したのが「目的と手段・方法は区別する」と手段方法は「5W2Hで考える」ということでした。今回は「目的と手段・方法は区別する」と同時に学んだ「目的と目標は違う」ということについて述べたいと思います。
●そんなことはよくわかっているという方は読み飛ばしてください。20代後半の私には「そうかそういうことか」と何か発見したような喜びでした。
■まず言葉の意味から。
目的とは到達(実現)したい状態のこと。あるいはやりたい動機(理由)です。
当時教えを乞うていた「脳力開発」で著名だった平野耕一郎先生からは、目的とは「どのような意義を求めるものか」「何のためにという精神的な価値を追求するもの」と教わりました。また「満足に値し、納得できるだけの内容を持った、自己の求める精神的なもの」という表現もいただきました。
●到達(実現)したい状態の特徴は、量で測るより(売上高1,000億とか1、000店舗の出店というもの)、質的で当人の価値観に根差した(社会に貢献する、顧客の満足を得るなど)感覚的で抽象的な色彩を帯びるものになります。
●量は客観性を持ちますが質は主観性が強くならざるを得ません。企業の目的を述べられたものを拝見すると起業された方の価値観から生み出されたものが多く、何としても実現したいという熱意、気迫が伺えます。
●では目標とは何か、それは何をどこまでやるのかを示すもの。目的が無くても設定は出来ますが、理想は目的達成への1里塚を現すものです。私の経験では20代の現場経験の時は数値目標(売上、粗利、純利益など)を与えられその達成に向かって手段を行使して働くことでした。
●会社には経営の基本方針という目的はありました。ですが当時それは私にとって毎朝の朝礼で唱えるお題目でした。(1、我社は社会の幸福と繁栄のために奉仕する 2、我社は正しい人間の完成とその集団の福祉をはかる 3、我社は正しい商人道に精進する)今でも暗記しています。立派な内容ですが現実は理想通りにはいかないという経験を何度もしました。
●それにひきかえ目標は(特に数値目標)働く拠り所でした。達成のための手段・方法を工夫する喜び、達成した時の満足感、未達成に終わった時の落胆と焦燥感は忘れることはありません。
●しかし、数値目標の達成は短期間に忘れ去られます。どれくらいの実績を上げて会社に貢献したかも本人以外は誰も覚えていません。私も電子部品販売店の店長時代に10億の売上で1億の純利益(利益率10%)をあげて当時の社長を驚かせ褒められたことがありますが、私以外は誰も覚えていないでしょう。(笑)
●他にも成功体験はありますが考えれば、数字の成果は自分の記憶の中にあるだけの虚しいものです。また目標とは客観性が強く与えられることが多いため実行者がコミットメントしにくい特徴があります。ですから組織では上から与えるだけでなく実行者が目標を自分のものとしてとらえ、打ちこめるように(主体性を持たせる)工夫がなされるのもマネジメントの重要な課題です。
■目的の設定は本人の意志を現すものですから設定の手段・方法はよくわかりません。何かを成し遂げたいという志を持つのはその人の個性でしょう。私自身の経験では人生における目的を明確に持った記憶がありません。(笑)
●長くサラリーマンをしたせいか、与えられた目標を懸命に達成するのに努力するという生活習慣しかありませんでした。志が低いと言えば低かったのでしょう。ですから同じサラリーマンでも目的を持って生きておられた方は尊敬します。私に言う資格はありませんが、これから先が長い方はぜひ多くの方に人生の目的を持たれるようお勧めします。
●ですが目的と言っても人生の志になるものばかりではありません。何か手段を行う時にそれは何を狙っているのか、どのような効果があるのかを考え、手段の選択や手段そのもののブラッシュアップに役立てるという仕事の仕方も大事でしょう。
●他にも目的を考えるとは「誰の何のために役立つのか」を考えることでもありますから、手段を考える前提として重要なものになります。これをおろそかにして、あれやこれやと手段のアイデアを考えるのは成果につながりにくいと思います。
■最近のテレビや新聞の広告を観ていて気づいた事例があります。それは富山常備薬グループの事業目的と連動した販売手段・方法です。年配の方はご覧になったことがあるでしょう。
●ひざや腰、肩に痛みを持っている方を助けたい。そのために開発したのが「リョウシンJV錠」です。きっかけは社長の御両親が痛みを抱えておられたからだそうです。何とか治してあげたいという思いから生まれた、これがこの企業の事業目的でしょう。
●目標数値はわかりません。手段・方法は①リョウシンJV錠の開発 ②通信販売 ➂宣伝広告 ④初めての方は1か月4,080円のところ2,090円初回、1世帯1回限りで体験客を集める ⑤継続購入客を確保するというところでしょうか。
●広告宣伝の多さからこの薬はよく売れていると思われます。対象となる顧客は高齢化社会では多いのでしょう。そういう人たちの悩みの解決に役立つというのは事業として成立しやすいと思います。
●先月のテレビでもセブンイレブンの若い商品開発担当者の方がスイーツの開発に努力され、巷間の有名菓子店や高級ホテルの専門職人の方の評価を受けておられました。より良いものを開発するという使命に燃えて、商品開発に打ちこまれている姿に羨望を覚えました。
●その結果、売上が伸びているとの紹介もありました。起業家でなくとも、事業目的のレベルでなくとも、「よりおいしいスイーツを開発する」という目的のもとに仕事に打ち込んでおられる姿に私は働くことの理想があると思い観ていました。
●仕事とは自分にとって価値ある目的が見いだせた時に、働き甲斐がうまれるものだと再認識しました。過ぎ去った私の仕事人生ではあまり味わえなかったことです。与えられた数値目標の達成と起こった問題の解決に「責任感」を持って頑張ったことしか胸を張れないのは残念な思いです。これから働かれる人たちにはぜひとも自分にとって価値ある目的を見出して働いてもらいたいですね。<完>
■今日は午後からPACの特別演奏会に出かけます。ピアニストの菊池洋子さんと河村尚子さんの競演です。指揮は下野竜也さん。菊地さんがモーツアルト、河村さんがベートーベンを弾かれます。楽しみですねェ。1週間後には定期演奏会です。芸術の秋を満喫します。
●昨日、来年3月の特別演奏会(広上淳一指揮 京都市交響楽団の神戸公演)の予約をしました。3月まで生きておられるかは不確かなので逡巡しましたが思い切ってクリックしました。平均生存月数では2月までです。ですがクリアしてやろうと思っています。今日、5,000円の支払いをします。無駄にならぬよう頑張ります。(笑)
- 登録日時
- 2019/11/16(土) 10:27