今月の提案②<修正>『成果=行動の(質×量×タイミング×集中力)』
●「手段は目的に従う」という提案をいたしました。このタイトルはアルフレッド・D・チャンドラーの著書「組織は戦略に従う」からヒントを得たものです。このことは、ドラッカー教授も「組織は目的を達成する手段である」と指摘され、組織構造は戦略から入らなければならないと仰っています。
●経営戦略論の世界では、その後「戦略は組織に従う」という主張も出ています。よき戦略はその組織の資源が規定するものであり、実行するのはその組織であるというのがその主旨です。
●戦略と組織は表裏一体であるというのが現実的です。では目的と手段の関係にも適用されるのでしょうか?現実にはあると思います。たいした目的、明確な目的を持たずに、優れた手段(技術やノウハウ、アイデア)があるから創業し、やがて成功するにしたがって目的を再構築するということは考えられます。
●では店づくりではどうなのか?私は無いと思います。中長期では店の存在価値を追究する目的の構築が必要であり、短期的(商戦単位)でもねらいを明確にしないと有効な手段は創り出せないでしょう。それは数値目標だけではだめなのです。数値による裏づけは必要ですが、売上高○○○(粗利高、利益高でも同じです)という金額や台数目標だけでは不十分です。
●効果的な手段の創出には、定性的な目標と数値の目標の細分化が不可欠です。このことは、また機会があれば述べましょう。ここでは、私の手段を考え出す「7つの視点」のうちのひとつをご紹介いたします。
●それは表題にありますように、成果=行動の(質×量×タイミング×集中力)という視点です。まず①質ですが、質は「内容」と「強度」と「位置」に分解できます。②量は「大きさ」と「頻度」です。③タイミングは「時期」と「期間」です。④集中力は「優先順位」「劣後順位」です。
●これを店(売場)づくりで解説しますと、①の「内容」、何をねらいに、何を取り上げて訴求するのかを決めていくということです。ポイントは「何を、誰に、いかにして」です。商品構成や売場分類がこれにあたります。部分的には新製品の発売であったり、用途提案であったり、旧商品の見切りなどがあげられます。
●「強度」は「表現方法」に含まれます。店(売場)づくりの技術はこの領域に入ります。市販で販売されています著書もほとんどこの領域の技術解説書です。VMDといわれるのもこの領域ですね。
●ゾーニング、レイアウト、ディスプレイ、POP、販売ツールなどがその手段です。これについてはいくつもの参考書があります。その表現方法のなかでで、私が主張する強度という視点は重要です。
●これらの技術の目的は何かと考えればわかります。伝えたいことを伝えたい人に的確に伝え、買い気を高め、理解し納得していただき、買おうと決心していただくことです。そのためには「強度」という視点が必要になります。
●強度は具体的数値で測定できるものではありません。感覚的なものです。ですが、そのように捉えた時に新たな手段が考えやすくなります。これを3つのレベルで表現しています。それは、「告知」「提案」「実演」です。お店の手段をこの3つの視点でチェックし、どのような構成になっているのかを見ることで、効果性を吟味することが可能になります。
●強度をお客様の側から見る判断基準として、最近メルマガ「ビジモテ通信」の市川浩子氏が紹介されたお客様の満足を「感動」「感激」「感嘆」に分けられているのが参考になります。
●期待より少し上回ったら「感動」、期待よりかなり上回ったら「感激」、期待よりはるかに上回ったら「感嘆」とうコンセプトです。いいですね。数字では測定できませんが、自分達で物差しにする事は可能です。
●「位置」は立地、ゾーニング、レイアウト、棚割り、情報物(POPや販売ツール)にチェックに使えます。小売業やサービス業では「位置」がとても重要です。例えば折角良いPOPを創られても、貼付する位置が適切でない事が多々あります。
●②の量については、「大きさ」と「頻度」に分けました。大きさは強度(表現方法)に含めてもよいのですが、ここではサイズという観点を重視しました。店舗であれば売場面積、陳列であれば分類ごとの面積配分、品目ごとの陳列面積配分、チラシやPOPではサイズなどが大きさです。大きさは大きければ大きいほど良いとは限りませんが小売の経験則は、売りたいものは良い場所に大きく展開することが効果的であると証明されています。
●「頻度」は回数と多箇所で展開する事です。広告は魅力ある内容が繰り返し訴求されることで効果が上げられます。売場も同じです。売場では多箇所で展開することが頻度をあげることにつながります。
●③のタイミングは「時期」と「期間」です。時期はまさに目的にとって適切なタイミングをはずさないことです。最近の本屋さんでは、テレビで放映されるドラマの原作がベストセラーになっています。そのような時に、品切れを起こさないで、売場の一等地に大きく展開されている店がよく売れている店でしょう。
●これもいつまでやるかということも大事です。ライフサイクルという発想が必要です。商品にも商戦にもライフサイクルがあります。良いタイミングで導入し、売れ残りが発生しないうちに撤退するのが上手な商売です。
●時期には導入期と展開期と晩期があります。それぞれのタイミングで必要な情報発信は違ってきます。新製品が導入された時に適切な情報の内容とその面積(量)の配分、展開期の内容、訴求方法、晩期の内容、展示の工夫などが違ってきます。
●④の集中力は「優先順位」と「劣後順位」を決めることです。実行するという観点からはこのことははずせません。私達は一度に多くのことを集中してできません。今日はこの1点に集中してお客様にお勧めしようとか、今月はこれを重点に展開しようと決めないと効果はでにくいのです。
●実際に一点突破で成功されている事例はいくつもあります。あれもこれもと追いかけるのは、成果につながりにくい場合が多いのです。
●なかには、対象となるお客様は誰か、その方々に何を重点でお勧めするのか、その手段・方法はと、きめ細かく決めて実行する三点突破という方法もあります。しかし、ねらいは一点に絞る事が肝要です。
●そのために「優先順位づけ」は重要なのです。では「劣後順位」とは何か、
それは「止める事を決める」ことです。よくあるのは、新しく取り組むことは指示しても、止める事を言わないのです。私達のポテンシャルには限界があります。集中力を高めるためには、しなくてもよいことを明確にすることが必要です。
●このように、7つの視点のうちのひとつを取り上げても、手段には分解をすると様々な視点を見出すことができます。これを沢山知っていて、目的と状況に応じて適切に使いこなす人は能力が高いと言えます。
●組織のなかで、職責が上位の役割を与えられている方々に必要な能力は、①目的意識が高いこと、②成果に対する貢献を重視する責任感が強いこと、③視点が広く、高く、多彩であること、④実行に対して指揮することが上げられます。それがあれば、ご自身で具体的な手段を考え出さなくとも、部下の力を引き出し、結集してより良き手段を創造し、実行することが可能になるのです。<完>
- 登録日時
- 2009/12/17(木) 10:06