【2019年12月今月の提案④】体験から学んだ私のマネジメント論 第9回
▲ミソソバの花。写真は知人からの贈り物です。晩夏から秋に、茎先や鉾形の葉のわきに、五枚の白い萼の先が少し紅色を帯びた花弁のない小さな花がマリのように集まって咲きます。
11月15日の誕生花は、水辺に群生するかわいい花、ミゾソバ(溝蕎麦)。
花の名は、溝などの湿った所に生え、草姿がソバ(蕎麦)に似ていることからという説や、実がソバの実に似ていることからという説があります。
別名のウシノヒタイ(牛の額)は、葉の形が牛の額に似ていることから呼ばれています。
晦日そばから連想して選びました。季節外れですがご容赦ください。花言葉は「純情」。懐かしい言葉です。(笑)
事例から学ぶコミュニケーションの極意【解説編】
■初めにこれから書くマネジメント論を次のフレームワークを念頭に書きます。
①言葉の意味(定義らしきもの) ②目的や理由 ➂具体的な手段・方法
④実例 ⑤注意点、今後の課題等。
●前回の問題編の解答と解説編です。
ケーススタディ 出典:元成城大学教授 堀川直義氏の記事に加筆修正しました。
映画『フーテンの寅さん』の「会話」から
●故渥美清さん主演の「男はつらいよ」シリーズ「寅次郎恋いやつれ」より
問題編は前号をご参照ください。
■解 説
●学べる「3つの教訓」
①あわてると「真実が把握」できない。
②「表現が不適切」だと、相手のためを思って言うことがあだになる。
③あからさまに真実を突くと、相手を傷つける。
●①について、寅さんは「娘さんがかわいそうだよ」と親父のところに乗り込むんですが、ところがそれは早合点だからちっとも「真実を引き出せない」のです。
●トラブルを解決するにはまず「真実」を引き出す会話をしなければならないのに、つぎつぎと早とちりをして寅さんは誤解を重ねています。真相をつかめなければ問題解決はできません。あわてものの寅さんの『思い込み(先入観)』が「真実」となる事柄(事実の把握)を引き出すことに失敗しています。
「思い込み」はしばしば間違いのもとになります。かつて成功したことがあるから思い込むのですが、事に当たってはその罠にはまらぬようにして都度事実の確認に勤めましょう。なかなか簡単ではありません。習得の秘訣は練習です。習慣化できれば自分のものになるでしょう。
●②について、寅さんは親父の高見氏のことを思い、娘の歌子ちゃんのことを思ってやっているのですが、江戸っ子風の反語を使い過ぎるので、その親切と誠意が高見氏には通じていません。また本来は相手に意識を向けなければならないのに、「自分の言いたいように言うので」相手の反応を確かめないという自己中心の会話になっています。結局は自分を客観視できていないのですね。
昔から『物は言いよう』といいますね。コミュニケーションは何を言うかという「内容」とどのような「言い方」をするかという方法で構成されています。同時に「表情や態度」も相手に伝わります。
●③について、掃除もしていないという状態は映画で見る限り事実(真実)だが、「これではいい作品が生まれない」とあからさまに真実を突くと、相手は憮然として反感を感じます。部下の仕事ぶりに対して事実の指摘は必要だが、あとの言葉の使い方に注意が必要です。それは指摘した者の『意見=考え』だからです。
◎意見には理由の説明が必要です。掃除をしていない(事実であろうが指摘者の評価でもある)ことと、良い仕事ができないとの間には論理の飛躍がありすぎて、受けては感情的に反発を感じることが多いのです。「仕事の段取りが悪くなるだろう」というような理由が適切かもしれません。(相手のレベル、相手との信頼関係にもよって対応は違ってきます)
●面接の会話では「引き出す面接」と「押しつける面接」があります。その「引き出す面接」にも、何を引き出すかによって、次の2つに分けられます。
①事柄を引き出す
②人柄を引き出す
●寅さんの会話の事例を無理にも分類すれば、最初の3分1の部分はトラブルの真相、いわば①の「事柄の事実」を引き出そうとする会話です。真ん中の3分1は、高見氏の性格(話し合えない人間)とか職業意識など、②の「人柄」を引き出す会話でしょう。
●最後の3分1は、「まじめにやればいつか芽が出る」とか「掃除もしない」環境では「いい作品は生まれない」とか、いわばお説教で、自分の人生観を「押しつける」会話となっています。
●寅さんの会話の事例からの教訓でもっとも学べるのは、「早吞み込みをしないで相手の言い分を最後まで聴く」ことだろうと思います。
●寅さんのやり方を復習すると、相手が「時代ものは書いていないが・・・」と言いかけると、最後まで言わせずに「現代ものか、ハハア分かった」となります。そして人妻のよろめき小説と決め込むが、高見氏が「君ちょっと待ってくれ・・・」と説明しようとしても、またまた最後まで言わせず、「分かってるよ、しかし、いくら生活が苦しくても・・・」と生活が苦しいので、いやらしい小説を書いていることにしてしまうのです。
●寅さんほどでなくても、相手の言い分を、すぐ途中で引き取ってしまうクセの人はいませんか?これではなかなかトラブルの真相はつかめず、誤解することも多くなります。
●あるいは相手の話を聞いているようで、途中から自分が話したいことに意識が向いて、相手の話を聴いて、内容を「広げたり、掘り下げる」とか「共感を示して相手の自己重要感を満たす」ことができない人も多いようです。でもそれが普通ですがね。(笑)
●寅さんの会話を「他山の石」として対人力に磨きをかける参考にしてください。他にも私が実習でよくやったのが、2人で対面して一人ずつに私は「犬好き」「猫好き」の役割を与えて自分の言いたいことを言い合う会話をしてもらいます。5分ぐらいやった後で、2人で感想を話し合うといかに「不快感でいっぱい」だったということが共有できます。
●その後に片方に相手に言いたいことを聴いてあげる、共感の相槌を打つ、話を促進する質問を投げかける、褒めるなどの意識を持って会話すると2人の感想はとても快適だったということになります。簡単ですからぜひやってみてください。教えるより気づきで学べますよ。<完>
■10月から11月にかけてNHKで「少年 寅次郎」というドラマをやっていました。4回シリーズでした。私には興味深かったですね。特に幼少時代の子役の寅次郎が渥美さんを彷彿させる容貌で笑ってしまいました。よくぞこういう子が居たものだと。
●寅次郎の生誕のいきさつがよく分かりました。おいちゃん、おばちゃんとの関係もあきらかになり納得です。生みのおやじと育ての母親。産んだ母親は渥美さんの主演の第2作で明らかでした。ミヤコ蝶々さんが演じておられたのですが瞼の母の一場面の応用みたいでクサいなと思ったものです。(笑)
●それより寅さんは育ての母(井上真央さんが演じていた光子さん)が大好きだったようで、その影響で優しくて美しい女性に憧れていたんだなと思いました。次々に惚れては踏み込めないのは寅次郎の少年時代に影響があるのだと納得です。(笑)
●それにしても井上真央さんは演技力が高いと思いました。寅ちゃんが憧れるお母さんを見事に演じています。男の子は美しいお母さんが好きなんでしょうね。私はそうです。(笑)<おしまい>
- 登録日時
- 2019/12/29(日) 10:12