【2020年1月の雑感②】
▲サクラソウとヒヤシンスの花。近くの花屋さんの店頭で撮影しました。
春に向けて色とりどりの花の苗が売られています。近所はさざんかの花ばかりなので春が待ち遠しいですね。「冬来たらば春遠からじ」の言葉をつぶやいています。ビジネスでは真冬から春の企画を進めよという教えでした。草花も春に咲くために今はエネルギーを蓄えているのでしょう。
菊池雄星投手に学ぶ反省の事例
■1月8日付のNamber WEBの記事から。今期大リーグのマリナーズに移籍しましたが、期待された成果を上げることが出来なかった菊池雄星投手の反省記事に注目しました。最近こんなに的確と思われる反省文にお目にかかったことがないので皆さんにも紹介します。まずは全文をお読みください。
ローテーションを守れたことは収穫だと思いますが、同時に課題もたくさん見つかり勉強になった1年でした。
高いレベルに挑戦するという事は簡単なことばかりではないですが、悔しい思いをしながら「これを越えた先に成長がある」と自分に言い聞かせました。今ぶつかっている壁を乗り越えた先に、自分が大きくなるという期待を感じています。
そんな1年間を振り返ってみると、日本とは環境の違いを多く感じるシーズンでもありました。
例えば中4日の調整に関しても、日本と基本的には同じでも、細かい部分で改めて知ることも多かったです。
マリナーズでは、先発投手の練習メニューは決められていません。ピッチャーによってはグラウンドに出ない選手もいますし、ピッチングをしない選手もいて、選手それぞれです。日本ではキャッチボールやランニングなどコーチに言われたことをやっていましたが、こちらでは自分自身で決めることが格段に多いです。
もちろんコーチからのアドバイスや原理原則は存在しますが、体の状態に合わせてやるかやらないかは自分の判断に委ねられています。
日本よりシンプルなブルペン練習。
僕はキャッチボールをしたいタイプなので、登板日以外も毎日のように練習に出ていましたが、チームのレジェンドであるフェリックス・ヘルナンデスは、中4日のうち1日は何もしない日、そこからやる日とやらない日のメリハリをつけていました。
次の登板までに、ブルペンに入る日数は基本的に1日だけです。日本での「ブルペンでの投球練習」と比べると、メジャーはよりシンプルです。
どういうことかといいますと、メジャーでは投球練習前に「今日の目的」を明確にすることを義務づけられます。カウントをつけてピッチングする、バッターを立たせてピッチングするなど、目的を設定するんです。
足りていなかった「考えて投げる練習」。
「今日の目的」は例えば、カウント0-0から3球で2ストライク1ボールを作ることを目指すとか、あるいは2ストライク1ボールから三振を取るスライダーの練習など、その日ごとにテーマを決めてブルペンに入るのです。何もテーマがなく投げることは良しとされていません。
球数100とか200球とか数字を目標にしてしまうと、この様な取り組みができない気がします。シンプルではあるのですが、目標設定を毎日し、考えながら投げる練習というのは、プロに入ってから意外としてこなかったと気づかされました。
同じ理由で、ピッチングの時はカウントをつけて、バッターを立たせて投げるように言われることが多いです。
自分が日本でプレーしていた時について反省しているのは、自分が意図したボールがいっていない時でも、結果的に抑えられていれば満足してしまっていたことです。
メジャーでは、本当に投げたいボールを投げることが大切で、少しでも甘く入ると打たれてしまいます。それくらい普段から意識を高く持っている必要があります。
それは、今季打たれている時期に気づいたことでもあります。ブルペンで「ここに投げてみな」と指示を受けても、ボールが正確に行く確率が低かった。投げたいところに投げる能力が、実は足りていないことがはっきりと自覚出来ました。
追い込んでから投げるスライダーと、カウントを取るスライダーの投げ分けについて頭の中ではいつも考えていても、日本ではそういう練習をしていなかった。つまり、試合でぶっつけ本番で投げて、その結果に一喜一憂していました。
メジャーの投手は制球が悪い?
マリナーズにはタイプの違う左投手が多くて、彼らからも色んなことを教えてもらいました。エースのマルコ・ゴンザレスはストレートの球速が140キロ出るか出ないかですが、16勝もしています。
彼はブルペンで全球、「ここへ投げる」と宣言してから投げています。
「今日は1ストライク1ボールからのピッチングを極めよう」や、「2ナッシングからボールのスライダーを投げよう」など、1球1球に根拠を持って練習しているのです。
メジャーの投手は制球が悪いという声がありますが、そんなことはありません。ローテーションの軸として回っている投手は総じて制球が良いです。その陰には、こういったブルペンでの練習方法もあるのではないかと思います。
登板当日の全体練習は参加しない。
調整でも、先発登板日のルーティンは日本時代と大きく変わりました。
日本では登板当日の全体練習に参加していましたが、メジャーでは全体練習は免除されています。夜の7時にプレイボールだとしたら、4時くらいに球場に来てミーティングをしてご飯を食べたらアップ、という行程です。
つまり、登板までのアップは1回しかしません。
逆に、日本では2回アップをする事に疑問を持たずにいました。
全体練習に参加すると、必然的に登板までに2回以上キャッチボールをすることになります。身体の疲労を考えた時に、あまり有効ではなかったな。と振り返ると思います。
ただ、これは日米の調整方法が異なるというよりも、個人に任せられている部分が大きいということだと思います。
アメリカでは、個人の責任で試合の時に100%の状態に持っていけば何でもいいよという感覚だと思います。中には、デイゲームの試合開始30分前に球場入りする選手も稀にいます。
日本人とアメリカ人に大きな差はない。
ただし、日本もアメリカも変わらないなと思うのは、練習しない選手がエラーをしたら「あいつは練習をしないからだ」と言われることです。それはどこの世界でも一緒だと感じます。
日本人とアメリカ人の違いは? とよく聞かれますが、文化の違いは多少あれど、同じ人間ですし、同じ脳を持っているのですから、喜怒哀楽のトリガーは大きく変わらないのではないかと考えます。
上下関係やルールすらも自己責任。
また、メジャーでも上下関係はありますし、ルールもある。「ルーキーはベテランよりも早くグラウンドに来なさい」とミーティングで言われることもありますし、遅刻に関してはとても厳しい罰則があります。ルーキーはマッサージをあまり受けてはいけないという「暗黙の了解」も存在します。
その点は日本と同じですが、訓示があった翌日にルーキーがきっちり早く来るかといったら、こない選手もいる。それに誰かが何かを言うこともない。
結果が出なければ代わりがいるのを知っていて、練習をしてもいいし、しなくて結果が出なくても、最後は自分で責任を取ればいいんでしょという考えなのだと思います。
ひとつひとつの行動に対して、自分の責任で決めることが当然とされているように感じます。
日本とメジャーで調整方法などが違うのは、個人が自由と責任を持っているかどうかに起因しているのだと思います。
「なぜやるのか」、「どういう目的でやるのか」を常に自分に問うことが、結果を出す為に必要な事だと思います。その事にもっと早く気づきたかったと今は思っています。
■いかがでしょう。菊地選手ご本人の反省文らしいのですが、わかりやすく的確な内容だと思いました。特に私が共感したのは「目的を持って投球練習を行う」という箇所です。何球投げ込むかという投球数目標ではなく、試合で自分が意図したボールを投げられるようにする目的意識の重要性に気づいているところです。(西武のコーチはこんな当たり前のことを教えなかったんですかね?不思議です。)
●プロ野球ファンなら納得されるのではないでしょうか。むしろ日本のプロ野球指導者がそういうことをさせていないことに驚きです。育成時代には投げ込み量は必要でしょう。しかし大リーグのレギュラー投手のレベルでは実戦で成果を出すための練習が必要なのはあたりまえだと思います。それは日本のプロ野球の1軍レベルでも同じことでしょう。
●日本では一流だった菊池雄星投手が大リーグ1年目でぶち当たった壁によって気づいた反省点は素晴らしい内容だと思います。失敗から反省して学ぶことはすごく大事なことです。しかし、次にそれを次に向けて活かせるか、対策は「改善すべきこと」「強化すべきこと」「新しく取り組むこと」「止めること」に分けて具体化し、実行してはじめて次が見えてくるのです。菊池投手にはぜひ来シーズンは成功してもらいたいと思いました。<完>
- 登録日時
- 2020/01/16(木) 09:32