【2020年01月の提案②】私の体験的マネジメント論 第11回
▲色鮮やかなジュリアンの花。冬場は引き続き近くの造園の花の苗売場で撮影しました。ビオラやパンジー、シクラメン、サクラソウなどが売られています。私はビオラとパンジーの区別を間違えていました。今、花が大きいのがパンジーで小さい方がビオラでした。
リーダーシップについて学んだこと<その2>
■前回は私の体験談から学んだリーダーシップについての教訓をまとめました。いかがでしょうか、こういう個人的な体験から導き出した教訓は個別の状況と私の人間性、価値観、体験、能力に影響されるものです。世の中に出ている優れたビジネスマンの体験や学者の方々の研究成果とは違った役割があると思っています。
●理屈を言えば前半は私の体験を基にした「個別論」です。最後のまとめは「一般論」でしょう。一般論とは誰にでも当てはまるように抽象化したものです。コミュニケーションが大事などは典型的なもので、なるほどと思いがちです。ですがじゃ具体的にどうするかはさらに事例などを交えて詳述しないとわかりません。
●もうひとつは内外の学者の先生方がまとめられたリーダーシップに関する「基本論」です。プロコンの池田代表がまとめられた著書、「基本からわかるリーダーシップ理論」に紹介されている多くの先人の考え方がまさに「基本論」のモデルです。
●前回の私の学びの体験は皆様の役に立つとは保証できません。なにせ凡人の体験ですから。(笑)ただご自身でご自身のことを考えられるヒントにはなるのではないでしょうか?そうしていただければ幸いです。
今回からは私が学びの過程で共感したケーススタディと識者の著書を紹介します。合わせて参考にしていただければと思います。
■最初はケーススタディから。一番印象に残っているのが「八甲田山死の彷徨」を教材にしたものです。ビジネパーソンにとってはミスミの三枝匡さんの一連の著書、「戦略プロフェッショナル」「経営パワーの危機」「V字回復の経営」「会社改造」を読まれる方が役に立つと思います。ただ私にとっては教育の場での「八甲田山死の彷徨」が印象深かくて忘れられません。
●私が学習したのは名前を忘れたのですが講談師の方が書かれた本です。原作は新田次郎さんです。講談師の方が書かれた本はすでに手元にはなく名前も、内容もお伝えできないことをご容赦ください。アマゾンで検索しますと平野喜久さんという方がkindle版で教材を発売されています。
●改訂版ケーススタディ「八甲田山死の彷徨」平野喜久著で検索されると詳細が出てきます。一部を抜粋して掲載しておきます。
■出版趣旨
自然科学の分野とは違って、社会科学の世界では実験が不可能だと言われます。
しかし、被験者に同じ条件下で異なったやり方で実行させ、結果の違いをシミュレートしたような事件が起きました。
それが、明治時代に起きた八甲田山雪中遭難事件です。
徳島隊が全員生還したのに対して、神田隊はほぼ全滅という結果の鮮烈な対比。
これは、リーダーシップとリスクマネジメントのありかたを考えさせる多くの課題を私たちに投げかけています。
新田次郎著『八甲田山死の彷徨』は、この事件を題材に、自然と人間の闘いを迫真の筆で描いた名著として知られています。
私たちが当事者たちと同じ立場に身を置いて、この遭難事件を追体験するには最高の教材です。
八甲田山遭難事件は、リーダーシップの研修教材として取り上げられることが多いのですが、結果のすべてを知っている立場から人物評価をしてしまっているのが一般的です。
つまり、失敗した指揮官をダメなリーダーと決めつけ、彼の行動はすべてダメな原因として解釈されるのです。
これは、「後知恵の講釈」と言って、結果を知ってから過去の行動を振り返って断罪しているだけです。
これでは、答えを見てから練習問題を解くようなもので、トレーニングになりません。
本書のケーススタディでは、小説『八甲田山死の彷徨』をベースとして、この遭難事故を追体験し、重要な場面ごとに指揮官の意思決定過程を検証していきます。
「もしも、あなたが指揮官だったらどうしますか?」
当事者と同じ立場に身を置いて、その時、どのような意思決定が可能だったのかというところから検証していきます。
読者が自身で考えるための材料を提供することを目的とし、「リーダーはこうあるべき」という単純な結論を押し付けない、いままでにないケーススタディです。
■改訂版(2016年版)について
初版発行から約3年が経過し、新たに得られた情報、新たに見出された論点などが蓄積してきました。
それらを本書に反映させるため、古い情報を新しいものに入れ替え、解説の不足する部分は補足し、新しい論点を加え、更に充実したケーススタディにしました。
分量としては初版の1.5倍ぐらいになりました。
目的や基本構成は初版と大きな変更はありませんが、内容は1段階レベルアップしています。
これからこの事例に触れようとしていらっしゃる初心者の方はもちろん、既にこの事例を深く理解していらっしゃるベテランの方にも、多くの気づきを提供できるものと自負しています。
■本書の特徴
<後知恵の講釈を排除します>
成功、失敗という結果を知った上で、登場人物を賞賛したり批判したりしません。
登場人物と同じ立場に身を置いて、「自分が同じ立場だったら、正しい判断と行動ができたか」を重点に検証し、本当に学ぶべき教訓を探っていきます。
<歴史談義を目的としていません>
ここでは組織経営の視点から、リーダーシップとリスクマネジメントについての考察を目的にしています。
一般の読者が知り得る資料に基づき、なるべく事実に則した分析を進めますが、厳密な史実の探究や歴史談義は目的としていません。
<『八甲田山死の彷徨』をベースにしています>
新田次郎著『八甲田山死の彷徨』と映画『八甲田山』をベースにし、補助資料としてその他の歴史書を参照しています。
登場人物の名前は、小説や映画の表記に統一しています。
■興味のある方はぜひご参照ください。私は神田大尉の立場を理解しつつも意志の弱さが招いた結果だと断じました。それと道案内の専門家を雇わなかった(外部の力の活用)準備の甘さ。(これについては大隊長の山口少佐のミスが大きいのですが)
●私の学びのポイントは、①事に当たっては「準備力」が重要である。
②不測の事態に陥った時の対処は必ず考えておく。(よく新規事業を提案する人は失敗した時の撤退時期、案を考えないものです)➂自分が苦手な分野は信頼できる補佐役、専門家を配備すること。④目標達成のためには、自分が責任を取る覚悟で権限は実行する。(船頭多くして船山に上るは最悪)⑤大きな組織は細分化してマネージしやすくする。などです。
●本論から外れるのですが、印象に残ったのは村山伍長の生き残り策です。映画では緒方拳さんが演じておられました。私もそういうことを考え、行動するだろうなと共感したものです。(このエピソードが事実かどうかは不明です。)
●ネットでは関連する記事がいくつか掲出されています。興味のある方はご参照ください。
https://diamond.jp/articles/-/160394
八甲田山の悲劇に学ぶ、楽観的すぎるリーダーの害
●著名な作家、佐藤優氏は以下のような設問を学生に向けてのケーススタディで出しておられます。ケーススタディではこの設問が大事で、受講生が考えるきっかけとなるものです。
〈問1:日清戦争後、日露関係が緊張した理由について述べよ。
問2:1901年に弘前第8師団が雪中行軍演習を行った理由について述べよ。
問3:青森歩兵第5連隊が雪中行軍に失敗した原因はどこにあるか。
問4:弘前歩兵第31連隊が雪中行軍に成功した理由を述べよ。
問5:リーダーシップについて簡潔に定義せよ。
問6:なぜリーダーシップは重要なのか。あなたの見解を記せ。【やや難問】
問7:アカデミズムにおけるリーダーシップについて、あなたの見解を記せ。【やや難問】
問8:教会におけるリーダーシップについて、あなたの考えを記せ。【やや難問】〉(佐藤優『2017年度同志社大学神学部特別講座「佐藤優氏と考えるキリスト教と現代社会」ワークブック』私家版、17年、26~27ページ)
問1~5は知識を問う問題だ。問6以降では、思考力が問われる。
■このテーマを書き始めたら1月20日(月)のBSTBSで午後10時からの番組にっぽん!歴史鑑定「死の行軍!八甲田山雪中行軍遭難事件」で概要が放映されていました。小説や映画は完成度が高いが創作部分もあり真実を伝えるものではないとのことです。そうでしょうがリーダーシップを学ぶ教材としては良いものだと思います。
●ちなみにこの番組の解説では佐藤さんの設問問3に対する答えと思われるものに、以下の4項目が挙げられていました。興味のある方は考えてみてください。
①予行演習との違い。(神田大尉は事前に少人数で予行演習をしてその内容を報告はしていた。そこに抜かりは無かったか)
②予行演習時とは天候が大きく違って悪化した。(なぜ予測できなかったのか、不測の事態を想定した準備はしていなかったのか)
➂準備不足。(出発の2日前に正式決定がなされた、なぜなのか、準備に抜かりは無かったのか)
④指揮系統の乱れ。(リーダーシップ教育ではこのことが重点的に取り上げられるが、果たして大隊長山口少佐の勇み足だけが原因だろうか?)
●それにこの番組で捜索が遅れた要因が紹介されていました。私にとっては新しい情報です。199名の死者を出したわけですがそれでも11名が生還されています。凍傷で手足の切断を余儀なくされたかたも含まれています。遭難から1週間遅れの捜索にもかかわらず生き残った方の生命力に敬意を表します。勿論199名の方々のご冥福は祈るばかりですが。
●今回はケーススタディ「八甲田山死の彷徨」の紹介で長くなりました。私が影響を受けた識者の著書の紹介は次回にしたいと思います。<完>
■20日月曜日に定期診察に行きましたが白血球が減ったままでした。あと2週間抗がん剤「ロンサーフ」は休薬となりました。28日(火)にCT検査を行います。次回の診察は2月3日(月)です。暖冬とは言え寒さ本番です。みなさまご自愛くださいませ。
- 登録日時
- 2020/01/24(金) 09:37