【2020年4月の雑感②】
▲チューリップの花。私の家の近所では数本しか見られませんが知人の贈り物の写真は壮観です。この花は近くで見るとあまり美しく見えないし、すぐに形が崩れかけます。やはり花の命は短いですね。桜の花も散り始めています。今週の雨で散ってしまうかもしれません。ですが魅せてくれてありがとう。
出版社商業界が倒産してしまいました
■本欄でもよく取り上げているビジネス知識源を主宰されている吉田繁治さんが4月1日に新刊を発刊されました。本の題名は「新しいチェーンストア理論」。出版元は老舗の株式会社商業界です。久々の流通業界を題材にした本なので早速アマゾンに申し込んで入手しました。ところが9日木曜日の吉田さんの有料メルマガの配信記事の中で出版社商業界の破産が告知されていました。
●以下に吉田さんの最新有料メルマガの後記を掲載します。
■後記:新刊は出ましたが・・・その後の報告
拙著、『新しいチェーンストア理論』が出ています。発刊以来、皆さ
んのおかげで、アマゾンの小売り・サービス業部門ではベストセラー
で1位や2位を続けています。
報告しなければならないことがあります。『新しいチェーンストア理
論』を出した直後に、出版社の「商業界」が破産したという電話が担
当からありました。担当者には、知らされていなかったという。
アマゾンの在庫が切れた後の増刷は、できなくなりました。当方には、
当然のこととして印税も、雑誌の原稿料も入りません。経営状態は良
くないと聞いてはいましたがびっくりしました。経営者能力の不足だ
と思っていたのです。いずれ電子出版にしてアマゾン等で販売します。
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4万か所あるショッピングセンターの閉店で先行する米国を追って、
(1)2020年から大閉店時代に向かう100万店(雇用700万人)の小売
業だけではなく、
(2)卸売業(雇用400万人)、製造業(雇用1100万人)、飲食業
(220万人)、サービス業(570万人)、IT関連(100万人)で、
(3)そして経営指導している経営コンサルタントには読んでいただ
きたいという願いから書いたものです。
低すぎるわが国小売業の、人的な生産性を2倍、3倍に上げる方法を詳
細に書いています。小売業は、2020年から施行される働き方改革の
「同一労働・同一賃金」はとれない。
平均の生産性(粗利益÷総労働人時)が、米国の小売業の38.4%
(2010~12年)と低いからです。米国の、ほぼ1/3の、人的生産性と
平均賃金でしかないのは驚くべきことでしょう。
https://www.jpc-net.jp/research/rd/report/pdf/sd2.pdf
情報化、IT化、AI化と、流通のDC化(集配センター化)、そして、使
う顧客、着る顧客、食べる顧客にとっての商品価値(機能・品質÷価
格)の高い商品の、開発方法を示しています。
商品価値の高いものを売る製造小売業では、行列が観察できます。
消費者の、商品に求める価値が1990年代とは変容したからです。
チェーンストアのあるべき商品戦略は、商品開発が主眼の製造、卸、
飲食、サービス業、IT関連にも共通します。商品開発の章は、チャ
ン・キムの『ブルーオーシャン戦略』の実践編でもあります。
■長年流通業界の末端に携わった経験から非常に残念な出来事だと思っています。破産をしてしまったので新しいスポンサーによる事業継続はありえないでしょう。多くの本を購入し参考にしてきました。また20代のころには商業界ゼミナール(箱根小涌園での開催が多かった)に何度か参加させていただき、倉本長治、渥美俊一、城功、藪下雅治、島田陽介先生らの講義に聴き入ったものです。
●そこには「損得よりも善悪を尊ぶ」という商いの理念のもとづく商人道が諸先輩たちの指導の元、多くの実務家に啓蒙されていました。一方、渥美先生を筆頭に科学的なチェーンストア理論に基づく小売業指導も始まっていました。
●実際には渥美先生らの指導に基づくビッグストアづくりから日本版チェーンストアへノウハウが大手小売企業を創っていきました。失敗もありましたが現在でもニトリの似鳥社長は渥美先生の信奉者であり成功した実践者として故人の遺志を継いでおられます。(著書 私の履歴書「運は創るもの」日本経済新聞社で語っておられます)
●しかし小売業界は渥美先生のチェーンストア理論だけでなく独自に企業化をされた会社も多く(ユニクロやしまむらなど)、繁盛店として生き抜かれた企業も多々あります。そこには少なからず株式会社商業界の果たした役割は大きかったと推察します。
●私は家電量販店におりましたからいつからかは忘れましたが商業界からは離れました。参考資料は「家電ビジネス」という雑誌を愛読していました。(この雑誌も数年前に廃刊となり発行元のリック社も倒産されたようです。)
●家電量販店業界もヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機、ケーズデンキ、エディオン、ジョーシンなどが独自のマーケティング、マネジメントノウハウを確立して成長されています。
●ホームセンター業界、スーパーマーケット業界、100円ショップ業界など独自に成長した企業は数多く、雑誌や書籍にノウハウを求めるようなことはなくなっていったのでしょう。
●コンサルタントになってからも商業界関連とは縁がありませんでした。小売業界にとどまらないビジネス知識の情報源を求め学びました。ドラッカー先生の教えや、海外の翻訳された経営書を購入することが多く、それらはダイヤモンド社や日本経済新聞社の発行するものが多かったですね。
●私が若いころは商業界が発信する情報誌(雑誌商業界や販売革新など)が唯一の情報源でしたが、年齢を重ねるとともにそれは変容していきました。多くの諸兄も同じだったのではないでしょうか?
●あくまで私の推測ですが小売業は多種多様な業種業態に分かれ、各企業が独自にノウハウを蓄積するようになり、小売業全般に向けた「商業界」という雑誌はポイントがぼけて来たのではないかと思います。またチェーストア向けの雑誌「販売革新」も大手になった企業には見向かれなくなり、急伸したコンビニエンスストアのノウハウには貢献できなくなったのではないかと思います。
●小売業の成長期には貢献した雑誌も成熟期には用を足さなくなったものと思います。役割を終えた者は市場から淘汰されます。しかし今回の未曾有のコロナウイルス禍が終わった後の小売業界には大きな変化が起こるのではないかと思われます。
●新たな時代に貢献する道しるべとなる情報は雑誌というメディアではないかもしれません。これから吉田繁治氏の「新しいチェーンストア理論」も読み、吉田氏とは違う意見をお持ちの島田陽介先生の諸説を聴きながら考えてみたいと思います。(島田先生は御年80歳を越えておられますが非常に素晴らしい発想の持ち主です)
●株式会社商業界の倒産というニュースに接して、私が生きてきた小売業界の一つの時代が終わったのだと感慨にふけりました。そしてこれからの小売業を含む流通業界も新しい時代を迎えようとしているのではないかと思っています。<完>
- 登録日時
- 2020/04/12(日) 09:55