【2020年5月の雑感➂】
▲ミニバラの花。近所の花屋さんの店頭で撮影しました。ツツジの花は1週間であっという間に萎んでしまいました。本当に花の命は短いですね。薔薇の花は6月に須磨離宮公園で満開を迎えているでしょう。楽しみです。それまで写真で鑑賞を。
叙事詩と抒情詩の違い
■コロナウイルス禍による緊急事態宣言も関西2府1県(大阪、京都、兵庫)は今日にも解除されそうですね。私は兵庫県住まいですからまずは良かったと思いつつも、今後も慎重に対応しないと危険は潜んでいると思っています。
●変わらず3密を避け、手洗い、うがい、外出時のマスク着用に、免疫力強化の軽い運動、健全な睡眠、美味しい食生活でできるだけご機嫌に過ごすことが肝要だと思い実行していきます。
●テレビもネットもコロナの事実情報のみをチェックし、政権批判やらは無視しています。それでもタイトルやテレビニュースでは安倍政権がぼろくそに叩かれ始めているのが分かります。無能だとか非常時の首相の器でない(田原総一朗氏=生意気ですね)、遅い、緊張感に欠けるなど情緒的な言葉で非難されているようです。
●そこへ黒川検事長が絡む定年延長法案が芸能人のまとまったツイッター攻撃の影響もあって延期されたと思ったら、ご本人が今月初めの緊急事態宣言下での賭けマージャンで今日21にも辞任というお粗末な結末になりました。
●アベノマスクについでのお笑いになるようなオチですね。マスクについてはほとんどの人が困っていないのに給食マスクと揶揄されるようなものを配布すると言って馬鹿にされています。安倍総理だけが懸命に使用している姿が残念です。政権の末期を現しているようです。
●マスクについてはまだ私の手元に届いていませんので評価は避けます。顔の大きな大人には不似合でしょうが、小さめの女性や子供さんにはピッタリかもしれません。それよりもマスクをするという習慣のPRにはなったと思います。
●いずれにせよマスコミの力は大きいですね。コロナウイルス禍を契機に現政権を打倒しようという意欲にあふれています。感染者数も死者数も諸外国に比べ圧倒的に少ないという良い実績にもかかわらず、悪い側面を強調しすぎです。
政治は結果責任が大事なはずなんですがね。
■前置きが長くなりました。今週は橋本治著「双調平家物語第2巻」を読み終えたのと、テレビドラマ韓国時代劇「大王世宗」と「華政」を見ていて、いずれも政権交代がテーマになっていたので現実のわが国の状況にも思いを馳せていました。
●天皇にしろ、国王にしてもトップに立つものの厳しさとそれをとりまく重臣や側近が政権を支えていくのには変わり有りません。このことについてはまた別の機会に述べるとして、今回は表題の「叙事詩と抒情詩」について書きます。
●実は私はこの叙事詩と抒情詩という言葉の意味と違いについて最近まで知らなかったのです。小説や映画は数多く読み、観てきましたが、叙事や抒情などという言葉で区分することもありませんでした。それで困ることなど無かったからです。(笑)
●そこで今回は少し勉強してみました。まずは言葉の意味(定義)をネットで検索すると。
叙事詩…物事、出来事を記述する形の韻文であり、ある程度の長さを持つものである。一般的には民族の英雄や神話、民族の歴史として語り伝える価値のある事件を出来事の物語として語り伝えるものをさす。(ウィキペディアより)
またコトバンクでは以下のように解説されています。
https://kotobank.jp/word/%E5%8F%99%E4%BA%8B%E8%A9%A9-80377
●では抒情詩とは。…詩歌の分類の一種。詩人個人の主観的な感情や思想を表現し、自らの内面的な世界を読者に伝える詩をいう。叙情詩とも言うが、「汲み出す」の意味から「表現する」を表すようになった漢字「抒」を使うのが本来的である。叙事詩と劇詩とともに詩の三大区分の一つである。(三省堂 大辞林より)
●もう少しネット検索をして2つの言葉の違いはと問うと、以下のようなアンサーが見つかりました。これは簡潔で分かりやすいですね。
●叙事詩とは歴史事象、伝承、英雄伝などを物語る 、長編の韻文作品のこと。
抒情詩とは作者の思いや感情を表す詩。元来は楽器に合わせて歌う詩のことです。
区別すると前者は出来事を書いた詩
後者は内面的な部分を書いた詩のことです。(ネットのベストアンサーから)
●大長編小説の多くは叙事詩ですね。その中に抒情詩的な文章が多く含まれているものとそうでもないものがあるようです。今回読み始めた「双調平家物語」はどうやら叙事詩のようです。まだ全16巻のうち2巻を読んだところですが、多くは叙事の記述です。これは少し時間がかかりそうな予感がします。そうですビジネス書を読むスピード感ですから。
●ところが1カ所だけ私には抒情的な記述だと思った箇所がありました。それは息子蘇我入鹿が惨殺された後、父親の蘇我蝦夷が歎き叫ぶ記述です。「入鹿、なぜ俺の言うことが聞けなかった」「入鹿!俺とお前と二人揃って入る墓はできておるのだぞ。入鹿、どこへ行った!」・・・このように蘇我蝦夷の心情を表現した文章が抒情詩的なんですね。わが子を思う親の心情を読むとぐっと惹きこまれます。これがないと長い小説は読み切れません。
●こういうシーンに触れると若き日に当時の彼女と訪れた奈良の飛鳥の甘樫丘(あまかしのおか)が思い出されます。なぜそこに行ったのかは思い出せませんが。(笑)
この丘に蘇我蝦夷は用心のため新しい館を築いたのでした。自分たちは狙われると予測した結果です。蝦夷は息子の入鹿にくれぐれも用心するように言って聞かせていました。ですが自信過剰の入鹿は隙を突かれて殺されたのです。(大化の改新のはじまりですね)
●本作は私の人生では最後になるだろう大長編小説です。何とか読み切りたいと思います。いままで大長編小説はそんなに多くは読んでいません。あげれば、五味川純平氏の「戦争と人間」全18巻、山岡荘八氏の「徳川家康」全26巻、船戸与一氏「満州国演義」全9巻の3作です。
●戦争と人間は17歳から35歳までの18年間かけて著者の初版本の発売を待って読みました。この小説は「レ・ミゼラブル」と同じように当時の出来事を歴史書のように併記しながら物語が進んでいく構成です。五味川さんの戦争と人間は昭和3年から20年までの昭和史と同時に架空の五大財閥の一族の満州進出から衰退までの群像劇です。
●叙述と抒情のバランスが良くて特に大人の恋愛小説の部分は見事だと思います。デビュー作「人間の条件」では今一つだと思った男女の機微の描写も「戦争と人間」では数段上手くなられたように思えます。映画は「人間の条件」本を読むなら「戦争と人間」という評価をする人も居ますが私も同感です。
●「徳川家康」も叙事詩的な内容と抒情的な内容が絶妙のバランスです。戦争と人間のような歴史書的ではなく全編小説として叙事が描かれその中に抒情的要素がちりばめられています。全巻ともに読みやすく読んでいて生きる上で(特にビジネスマンとして)のためになる話がちりばめられています。但し全26巻は長かったような記憶がありますね。スタミナのある年齢で読まれると良いでしょう。
●「満州国演義」は全9巻ですが原稿用紙で7,500枚超です。戦争と人間が全18巻ですが8,000枚超ですからほぼ同等の長さです。船戸与一氏のこの小説は大叙事詩と解説者が書かれているように、登場人物たちの抒情詩的な表現は押さえられています。船戸作品の特長でもありますね。
●主人公は満州国の盛衰という出来事です。それを主要登場人物の敷島4兄弟のそれぞれの視点から描かれ、そこに間垣徳蔵という4兄弟と因縁浅からぬ人物が狂言回しとして登場します。実在の人物は、名前は登場するが小説の中では生きた動きはしません。それぞれへの評価は船戸氏がいろんな登場人物の口を借りて厳しく行っています。
●特に辻政信、瀬島龍三など高級参謀、東条英機、牟田口廉也など軍事指揮官は厳しく糾弾しています。戦争と人間とはまた違った視点で昭和前期の満州国を中心とした戦争から太平洋戦争まであますことなく描いてくれています。日本の近現代史を学ぶ副読本としても価値があるでしょう。
●歴史を学ぶには叙事詩的な小説が有効でしょう。ですが小説を読むなら抒情的記述が多いほど私には読みやすいですね。最後に戦争と人間、劫火の狩人第1部から主人公の五代俊介に姉の由紀子が意見するセリフの一部を紹介します。
人妻の狩野温子に恋をした俊介が父親に冷たく突き放された後、由紀子との会話から・・・。
●「俊介は今でも女の子みたいな顔をしていて、心の中には火山を抱いているのよ。真実とか、正義とか、世の中で一番貴重で、同時に大人たちが一番持ちたがらない種類のね。温子さんは、あなたのそこを愛して、そういうあなたについていきたいと思うでしょうけど、俊介の方が温子さんから触発されることが段々なくなってしまうということに気が付くと思うわ。もう予感しているかもしれないわよ、あなたのことを思えば思うほどね」以下会話は続くんですが、私には痺れる展開です。(笑)こういった表現がいくつもあって付箋が貼られています。読みかえすたびに上手いなと感心するばかりですが。
■今週はBSシネマで「飢餓海峡」という3時間ばかりの旧い映画を観ました。水上勉さんの原作ですが、子供のころ父親が買ってきた週刊誌の連載で読んだ記憶があります。なぜか筋書きはほとんど覚えておらず主人公の犬飼多吉と杉戸八重という名前だけはよく覚えていました。
●映画は評判が良くて日本映画の名作だとアマゾンのDVDの紹介には書かれています。たしかに退屈しないで観ることができましたが、特別名作だという感想は持ちませんでした。内容にもあまり共感できませんし、何を言いたいのか汲み取れませんでした。特に女の哀しい性はわかりますが、杉戸八重さんは男にとって厄介な女です。そう思いました。映画は録画しましたが消しです。(笑)
<完>
- 登録日時
- 2020/05/21(木) 15:54