今月読んだ本 『買物脳』成功する企業になるための5つのキーワード
03年8月発行 本間理恵子著 主婦の友社
■最近の問題意識の一つに、人間の買物には心の働き、すなわち脳の働きが大
きな影響を与えているのではないかということがあります。最初は右脳と左脳の利き脳の差が影響するのだろうと思っていましたが、最近「男脳・女脳」というのがあることを知りました。そんな時に知人の書棚からこの本を見つけ、一読してなるほどと共感することがあったのでご紹介します。
■私の研修の受講生の方々の多くは若い女性です。私の考えやノウハウをお伝えしたとき、すんなり受け入れられることとなかなか理解されないことがあります。また彼女たちの売場づくり、POP製作、チラシ制作で私が共感しにくいことに出くわすこともあります。そんな時、なぜだろうという疑問は湧いたのですが答えがなかなかわかりませんでした。今回の著書はそんな私の疑問を解決してくれる手がかりになりそうです。
■本書は著者の本間理恵子さんが、所属する博報堂カスタマーマーケティング局が設けた、インターネット上の仮想の会議室である「買物会議室」に寄せられたメンバーの回答を分析して書かれたものです。その理論的根拠を裏付けるためにいくつかの専門書を引用されています。例えば
「脳の性差―男と女のこころを探る」新井康充 共立出版
「女の直感が男社会を覆す」ヘレン・E・フィッシャー 草思社
「話を聞かない男、地図を読めない女」アラン・ビーズ、バーバラ・ビーズ
主婦の友社などです。
■その成果は「買物脳5つの法則」としてまとめておられます。本書は前半がその解説であり、中盤に「買物脳テスト」があり読者も自分の買物脳度を診断してその結果を解説でわかるように工夫されています。後半は店づくりや商品開発への処方箋が示されるという構成です。
■「買物脳」の買物行動パターンを形成する5つの要素は、「男脳型」的な買物行動と「女脳型」的な買物行動の2つに分類されています。著者によると男脳型=男性、女脳型=女性と決めつけるのではなく、概ねその傾向があるとして解説を行っておられます。
■しかし著者の問題意識は、この当時のモノが売れないのは男脳型の商品開発や買物行動(店づくりも含む)づくりが要因であって、もっと女脳型の買物行動の視点から考えるべきだということにあるようです。
■私も本書を読んでいて自分の考えが、男脳型から生み出されたものが多いと気づきました。私が指導や研修で感じた女性の受講生との間に感じたかすかな違和感は、この著者が提唱することに対する私の認識不足にあったのではないかと思います。そんな反省をさせてくれた本書の核になる部分を要約しましたので以下で紹介いたします。
■「買物脳5つの法則」
1、男脳型は成果を求め、女脳型は快楽を求める。
―男脳は買物行動を人よりうまくこなしたい。
女脳は買物行動自体を楽しみたい―
2、男脳型はスペックで買い、女脳型はイメージで買う。
―男脳はまずスペックありき、女脳はまずイメージありき―
3、男脳型は理屈で買い、女脳型は直感で買う。
―男脳は自分をも説得にかかり、女脳は瞬時に納得する―
4、売場では、男脳型はモノでイキイキ、女脳型はヒトでイキイキ。
―男脳は売場と格闘し、女脳は売場とコミュニケーションする―
5、男脳型は征服を買い、女脳型は共存を買う。
―男脳はモノを征服したい、女脳は仲良しを維持したい―
興味が湧かれた方は本書を読まれることをお薦めいたします。
- 登録日時
- 2008/04/01(火) 11:48