【2010年1月のトピックス】
比較する事で一石二鳥をねらうJTBの新聞広告
■1月に大手の旅行代理店「JTB」の優れた新聞広告が1ページ全面で広告されていました。それは新聞ならではの「じっくり読ませる」内容であり、その表現方法も効果的なものでした。
■どこが優れているかと言えば、内容面では自社の顧客満足に対する対応力を訴求しているのです。その内容については大手企業ならではのものですから、中小では簡単に真似はできないでしょう。私が注目したのはその表現方法にあります。
■まずは写真をご覧いただければよくわかります。JTBの広告の表現方法で優れているのは、自社の新しい取り組みを決意として表現しているのですが、新聞では「現状と比較して、これからはこのように変ります」と訴求している点です。
■ちなみにこの内容は、テレビCMでも同社のホームページでも訴求されています。そこでは、右側の4月から取り組むことのみを発信しています。テレビでは時間の関係でやむを得ないのですが、ホームページでも新聞のようなこれまでとの比較はありません。なぜなんだろうと疑問を感じています。
■私の持論である「販売のストーリー化」の要素のひとつとして、「比較選択の援助」というのがあります。顧客の購買心理を考えた時に、多くの方々が「比べて選ぶ」というこころの働きをされる場合があります。これは私自身に置き換えてもしばしば経験することです。
■今回の「比較広告」はこの「比べて選ぶ」という心理に対応したものと思われます。しかも、どうやら一石二鳥をねらっているのではないかと推測しています。それは、販売のストーリー化のもうひとつの要素である「必要性を喚起する」ということにも効果があるからです。
■JTBの第一のねらいは、この春に旅行をしたいと考えておられる方々に「自社を選んでいただく」という他社との差別化があるのでしょう。そういう意味では「比較選択の援助」が目的なんでしょう。
■もうひとつは、旅行については潜在意識にしかない人々に、そういうふうに変わるなら旅行を考えてみようかという、売り手からする期待客づくりをもねらっているように思えます。
■つまり、現状の旅行に対する多くの方々の不満点をクローズアップすることで、「そうなんだよ、だから旅行をする気が起こらない」だという気持ちを代弁しています。そのうえで、JTBはこれからこのようにしますと、具体的な対応を決意で表現して、それならば考えようかとその気にさせています。
■これは人の心理を考えた上手なやり方です。現状を明確にしてそれに対比してこれからはこうするという比較方法は、比較する技術のなかでも重要なものです。他の業界でも、使用前と使用後の実例を対比して必要性の喚起に成功している事例はごらんになったことがあるでしょう。(美容・健康などに多いですね)
■「比較して提示する」ことはわかりやすく、人のこころを動かしやすくする効果があります。今回はJTBの新聞広告を取り上げて、比較による一石二鳥の効果についてお伝えしました。
■販売店の店頭にも比較表POPはあります。特にハードグッズのお店は、機能比較表が当たり前になっているようです。しかしそのねらいは、沢山の品揃えの違いを、現時点での機能・性能比較で伝えようという視点のものがほとんどです。
■そこには、お客様に選びやすくしていただこうという思いがあるのでしょうが、お客様に必要性を喚起しようという視点はありません。沢山ある中から選びやすくするという視点のみです。これではお客様の満足実現に対する対応力としては、普通(並レベル)ですね。
■比較という切り口には、私の捉え方では5つの視点があります。JTBの広告はそのうち2つを活用して一石二鳥をねらったものだと推測しています。それに比べると販売店の店頭では横並びの機能・性能比較表が殆どです。ぜひもう一歩踏み込んだ「比較の活用」でお客様の満足への対応力をあげていただきたいと思います。<完>
- 登録日時
- 2010/01/31(日) 22:17