【2010年2月のトピックス】
ドコモの新聞広告に学ぶ「CSへの対応力」について
■1月31日付け朝日新聞にドコモの全面広告が掲載されています。その内容はキャッチコピーに表現されています。「ドコモのケータイは、買ったときも、買ったあとも、うれしい。」とあります。要は、買った後の同社のアフターサービスの充実した内容を具体的に紹介しています。
■これを見て何を学ぶのか、そのポイントはいくつかあります。まず内容ですが、「買った後」を重点的にとりあげていることです。CS=お客様満足ですが、これは「買うとき」だけではなく、「買った後=買う前」だということを暗に伝えていることです。
■当たり前のようですが、なかなかここに焦点を当てて全面広告をすることは少ないのです。どうしても新しい商品の販売、新しい料金の訴求のウェイトが高くなります。販売店にいたっては、新製品発売かMNP(他社から乗り換え0円で端末販売や基本料金○ヶ月無料など)の訴求に偏っています。
■訴求されている3つのアフターサービスに同社の戦略が見えることです。まず「ケータイも健康診断」を無料で行なうというサービス。これは車の車検にヒントを得たサービスではないかと推測します。無料てんけんを通じて、お客様とのコミュニケーションを行い、端末のみならず同社のコンテンツ、サービス商品、料金プランの見直しなどの「必要性の喚起」の機会にするということでしょう。
■ご承知のように通信業界は、端末の開発、販売は手段であり、本当のねらいは使用料金の拡大にあります。コンテンツビジネスもそうですね。定額料金制でないものは、使えば使うほど収入が増えます。そのためには、顧客とのコミュニケーションの機会を増やし、おすすめしなければ自然には用途は増えません。
■二つ目の「ご長寿ケータイ様へ」は電池に関するサービスです。携帯電話をお使いだとわかることですが、普通に使っていても最初に訪れる問題は、電池がすぐになくなるようになるということですね。
■これは現状の携帯電話の最大の弱点だと思います。機能や性能が充実すればするほど、使用時の消費電力は増えます。当然何度も充電が必要になります。電池への負荷は高くなるから、現在の電池の方式ではやむを得ないことです。この弱点をお客様の不満にならないようにするのがこのサービスだと思います。
■三つ目は、「全力で、データ救命」です。これは水濡れや水没による携帯電話の使用不能だけでなく、お客様が一番困られるのであろう蓄積されたデータの復旧サービスです。おそらくそういう事例がもっとも多いのではないかと推測します。
■3つのうちあとの2つは多くの方々が経験されている「あるある」ということに対する対応でしょう。これは共感を呼びやすいですし、まだご存知でない方、経験をされていない方に伝える効果があります。
■しかし、ドコモが最も重要視しているのは最初のサービスだと思います。なぜならこの内容はTVCMでも発信されているからです。お客様の困っていることに対応しながら同社の重要なCS施策を浸透させていこうという広告は、流石といえるでしょう。
■次に表現方法で学ぶものは、3つに絞ったという点です。ひとつでは読者が限られます。3つ以上では多いなと感じさせます。3つに絞るのが最適だという経験則があります。しかも内容が先程述べたようによく考えられています。
■また爆笑問題の2人を使い、写真とイラストの組合せで見やすくしています。細かい文字の部分は、手帳に記載されたように表現しているのも秀逸です。これも人間の習慣を利用したものでしょう。
■配色も春らしく、ドコモカラーの赤を抑え気味に、全体は薄ブルーにして、ピンクと薄いブルーの携帯電話と若干の黄色を使っています。しかしドコモカラーの赤を生かすために、読ませる文字は全部赤色です。本当は黒文字にすれば視認性が良いのですがあえて赤にしています。
■これはドコモカラーを出すということと、新聞の中の1ページですからそれまでの黒文字から変化を持たせたのではないかと推測します。28ページの16ページ目ですからそういう工夫がなされたのではないでしょうか。ただその前の2ページが「いきいき健康カレンダー」という全面広告なので、そこに注目がいくことも考えられます。
■今回の広告は同社のCS政策の一環だと思われますが、CSとはお客様への対応力のことです。それをお客様の購入前、購入時、購入後という購入プロセスを時間軸で捉え、「買ったあと」に焦点をあてています。
■そこでの対応力のうち、商品(端末、関連商品、サービス商品、コンテンツ、料金プラン)の強化・充実ではなく、購入プロセスの買ったあとのアフターサービスという機能を訴求しています。
■対応力には購入時の店舗や購入後のアフターサービス、購入前&購入後の情報提供であるホームページや広告、カタログ、ツールなどがあります。そして、購入時のソフトウェアとして、店づくり(売場づくり)と接客応対があります。
■こういった総合力の中から、時々のタイミングを考えいま重要なCS施策を訴求しているというのが今回の広告でしょう。そこにはただイメージ広告的な人の感覚だけに訴えるものでなく、実質的なメリットを訴求していく姿勢は評価されると思います。
■ただ、このことが各販売チャネルである販売店の店頭で、どのように実現されているかが問題です。このことについては今月の近隣の店舗視察で拝見しようと思います。<完>
- 登録日時
- 2010/02/02(火) 11:40