【2021年04月の雑感②】
▲毎朝8時半に腰痛の治療のため近所の医院に入るため通った道端に咲いていたチューリップの花です。前回も掲出しましたが4月初めに咲き始めて10日過ぎに最盛期を迎えその1週間後には花が開いてしまいカットされていました。毎朝目を愉しませてくれてありがとう!
腰痛との闘いは続く
■『Aという苦痛は、Bという苦痛が生まれたとたん、消失する。少なくとも感じなくなる。苦痛の司令塔である脳の伝達機序のおかげであり、長く生きていると、人は何度もその恩恵に与る。』
●4月10日(土)の朝日新聞朝刊の別刷りを久しぶりに読んでいて行き当たったのが、作家の小池真理子さんのエッセイ「月夜の森の梟」の冒頭の文章です。
とても共感は覚えるのですが、私の現状はそうではありません。三重苦を味わう日々なんです。
●胸椎の圧迫骨折で腰痛になったことは前回に書きました。今日はもう4月20日です。ですが腰痛の方は毎日の電気治療にもかかわらず回復しません。当初より少しましかなというところです。その上に4月11日には左の奥歯が根元からボキッと折れてしまいました。20年強前に治療しかぶせてあったものの中が痛んでしまったようです。
●右上の歯の治療の途中でしたので食事をするのが不快になっています。19日の治療で先生からは、右側はあと2回で終わりますと仰っていただきました。それにしてももう5か月もかかっています。今回折れた左の奥歯はそれからの治療です。時間が心配なので先生には癌の治療が終末期に入っていていつまで生きられるかわからないのですと伝えました。
●先生は驚かれたようです。おそらく今までより早く治療して頂けるでしょう。「最期は美味しく食事をしたいんです」と言った私の言葉が響いたようです。治療方針は入れ歯にすることにしました。ちょっと面倒なようですが、人生で初めての入れ歯に挑戦します。(笑)
●そこに今回の抗がん剤の服用で4月15日ごろから食欲不振と体がだるくなりました。薬の副作用ですね。腰が痛い、歯が折れる、気分は悪く飯が食えない。まさに三重苦です。ぐっすり眠れない、食事が満足にできない。一つの苦痛が他の苦痛を忘れさせるという小池さんのお話のようには行きません。
●4月もあと10日ほどなのに今月は試練が訪れています。誰のせいでもなくすべて自分の体に起こったことです。自業自得でしょう。『乗り越えられない試練はない』はコミック「JIN」で学んだことです。苛立ちを覚えますが、怒らず、悲しまず、できるだけ愉快に生きるべく頑張っています。
■この間スポーツ観戦で嬉しいことがありました。ゴルファーの松山英樹選手のマスターズゴルフ選手権の初優勝です。ゴルフファンならみんな一様に感動し、松山選手の優勝を讃えておられると思います。本当に良かった。生きているうちに日本人選手のマスターズ優勝が見られて大大満足です。(笑)
●あとは競馬で日本馬がフランスの凱旋門賞を優勝することだけです。年に1回のことだけに私には時間がありません。どうかこの夢は実現してもらいたいものです。昨年の三冠牡馬コントレイル号は遠征しないそうで、今年で引退し種牡馬になるそうですから他の馬に頑張って欲しいですね。
■松山選手の快挙の感想をもっと書きたかったのですが、三重苦に苦しむ自分にはその気力がありません。そこへ愛読しているメルマガ「ビジネス知識源」の吉田繁治さんが素晴らしい感想を贈ってくれました。横着ですがそれを転載して皆さんとシェアしたいと思います。少し長くなりますが以下吉田氏のメルマガから。
●今日も興奮と感興が収まりません。松山英樹の勝利です。サンデー・バックナインにはいるとき、5打差の1位でした。
普通なら楽勝の差です。マスターズは、普通ではなかった。
3つのボギーを打ち、最後は1打差の辛勝でした。
【静かだった勝利】
バックナインは、解説の中島常幸があとで嗚咽するくらい苦しかった。最後の50cmくらいをタップインしたとき、放送席の3人(中継アナ、解説の中島、宮里)が泣き、約1分は声が出なかった。
松山も、勝利の手を上げることはなかった。キャディの早藤将太(大学の後輩)は、18番の旗を刺したあと、別れるコースに向かって日本式の礼をしていました。
誰もいないコースに向かっての礼でした。米国メディアがトップにとりあげものが、この礼でした。他人を敬うお辞儀は、日本人の動作で、もっとも美しい。ずっと以前、京都の柊(ひいらぎ)旅館に泊まったとき、小雨の中で見送る女将がこの動作でした。
4打差の1位で迎えた最終日、「14か15アンダーなら、相手は追いつけないと思っていた(3~4バーディの追加が必要)。しかし、朝から緊張していて、バーディを狙ってとれる状態でなかった」と松山は言う。
18番では、思うように体が動かず(本人の弁)、危険な左は避けることができても、右のバンカーに外していました。
【松山の脚の固定力】
松山は、180度ねじり上げる上体を固定する、腿の筋肉がすごい。固定した土台の上で、胴の回転も鋭くなる。土台が固定していないと、スピーカーも、いい音は出ない。ボクシングでの一定線を超えたパンチ力は脚力から来るものでしょう。井上尚哉は、大きなタイヤを引っ張る訓練をしています。
後半の2日間を一緒に回り、バックナインを3連続バーディで追い上げたシャウフレ(3位タイ:世界順位は6位)は、「松山は、まるでロボットだった」という。
【マスターズという特別のもの】
最後まで攻めて、計算外に飛び過ぎ、最終日にはタブーの、池に入れました(15番のボギー)。
守ることは、バーディがとりにくい安全な場所に打ってパーを狙うことです。攻めることは、オーガスタのコース設定では、落下地点が1m外れるとリスクのある場所を、狙うことです。
松山は「マスターズでは、バックナインで守っていては勝てない」と述べています。最終日に3日目までの差を守る気配が相手に見えると、ここぞという場面で信じられないプレーをする後続者が攻めてきて、負けた人も多い。
トップクラスは340ヤードなら、簡単に打ちます。飛距離の差は、「バーディ数+失敗数」の差になります。ヘッドのスイートスポットから1センチもズレると、ヘッドに余計な回転が加わって、球はギア効果で逆方向の回転になり、曲がりの範囲が大きくなるからです。
【残り2ホールのプレー戦略】
松山は残り2ホールを、2打差で迎えました(1ホールでひっくり返ることがある差です)。5打の貯金は、底をついていた。
松山は17番からは、失敗すればダブルボギーになることもあるバーディを狙うのでなく、ボギーを打たない戦略に変えていました。それが、17番の50cmくらいショートしたパターに表れています(松山が、パターでショートすることは珍しいのです)。
17番はパーでした。このとき松山は、にやりと笑っています。残るは1ホール。ボギーで上がれば勝てる。ドライバーをバンカーに入れなければ、ダブルボギーはない。
【道具の進歩】
練習量では恐らく世界1という。マスターズの最中も、アップダウンが大きく、疲れる18ホールを回ったあと、暗くなるまで残って、最後まで球を打っていました。
球と新素材のクラブ、目に見えなかった部分の技術解析が、コンピュータでの高速画像解析により、20年前と比較にならないくらい進んでいます。
パターでも、順回転が加わりやすいインサート素材が使われます(曲がりが少なく、転がりが長い)。完全な平面の大理石の上で高速カメラで撮って、映像の解析しているのです。
2015年からのAIの評価関数で着手の解析が進歩した将棋に似た面があります。いずれも10代のジュニアプレーヤーの進歩が、著しい。藤井聡太二冠もその1人です。唯一ではない。他に、多くの新人が控えています。
【そっけない優勝スピーチ】
松山は仲間内では、面白いことも言うらしい。普通は、シャイで言葉が少い。ファンサービスは皆無。優勝のスピーチも、「素晴らしいコースで優勝できました。Thank You!」と極端に短かった。
「(10年米国にいるので)英語は聞けば少しはわかる。しかし自分で話したのは、聞いたことがない。公の場で私が聞いた最初の英語が、このThanK Youです」と進藤大典元キャディは言う。いつも、専属の米国人通訳がついています。
【チーム作りが戦略だった】
頑固極まりない性格。意見が違うこと指摘することがあるコーチはつけていなった。自分での技術解析に自信があったからです。
しかし20年11月からは、4月のマスターズに備え、「スウィングの客観的な評価ができるコーチ(目沢秀憲)」をつけていました。自己評価は、頑迷にもなる主観のものです。今回の松山は、チームを整備していました。
時折、松山にしては珍しい笑顔があったのはチームがあったためでしょう。あわや優勝かと期待された2017年の全米プロ(4大メジャーのひとつ)では、バックナインの3つのボギーで失敗していたからです。
【心理】
心理は、「ギリギリ場面の1打」の体に動きに波及し、良くも悪くも「流れ」を作ります。「ゾーン」という物理的な技術の解明が及んでいない領域もあります。概念と心理は心の動きであり(カント的観念の領域)、感性のような物理的・信号的なものではない。
21世紀には、世界水準から後退している領域が多い日本にとって、自信を与える快挙になっていくでしょう。
日本は今「活力の高まりのない国」になっています。金融・経済の活力(=未来への自信)が、最高に高まったのは1985年から89年の5年間の、資産バブルのときでしたが、1990年から崩れたのです。結果は、30年ゼロ成長でした。
日本人の集合知を「世界でも勝てる」と変化させるように思います。未来を拓くときは、目標に向かう努力を継続させる「自信=自己の未来への信用」は、肝心な役割を果たすでしょう。
体力の差が明らかな100M走のように、ゴルフでは「日本人には無理だ」と思われていました。マスターズでの優勝は、アジア第1号です。スポーツでは、誰かが世界1になると、あとの世代が続くことも多い。
マスターズでの優勝という夢を、達成目標にするのが、技術の戦略でしょう。これは松山がボソボソと言ったことです。企業経営でも同じです。松山は未来を拓(ひら)いたのです。
メジャー優勝の個人技術を持つ松山にとっては、その戦略はチーム松山の整備であったように思えます。それが、専業コーチとしては新人ですが「原因→結果」でのデータを重んじる目沢秀憲だったでしょう。松山はマスターズの前に、彼に、「今度は勝てそうな気がする」といっていたという。コーチの言葉で、微妙な領域での動作を修正したのは本人です。
【自分のプレーを、途中で理解する】
何が変わったのか? 「僕の想像ですが、(松山は)ミスの要素を理解しながらラウンドを進めていけるようになった」と目沢氏は述べています」 心は金縛りでも、論理的な脳は冷静だったのです。
理解とは、「コースの地形+芝+風の読み→原因(意識下にあるスウィング)→結果(回転+球筋と、落ちて止まる場所)」の解析の概念化(=言葉化)です。
トッププロにとっては180~210ヤードの距離を打つミドルアイアン(5番から7番)すら、グリーン上の傾斜とバックスピン計算に入れたアプローチショットの範疇でしょう。規定の距離が飛べばいいアマとは、別の次元です。
仮に同じところでプレーをしても、われわれと松山は、別の次元の現実を見ています。感覚がとらえる物理的な外界は同じでも、観念は個人で異なるからです。
同じものを食べても、人によって「味わい」は違います。リンゴを見ても、画家とわれわれは、違う見方をしているでしょう。本を読むこと、経済指標と株価も同じです。現在の、世界の株価水準に対しても、対極的な見方があります。
(1)リーマン危機後12年目の過剰流動性バブル(約30%:推計)
(2)中央銀行のマネー増刷の長期化、低い金利、次期期待企業など
の金融指標から見て正当な価格(約70%)
根底にあるのは、コロナ危機対策としての、中央銀行の短期ゼロ金利です(2020年3月~FRBは2023年までという)。このゼロ金利が続く限り、高利回りの詐欺的なデリバティブが作られます。投資家と金融機関がゼロ金利で借りて、イールド(差額の利益)のある高利回りの、最後は詐欺になるデリバティブを買うからです。
〔原則〕ゼロ金利は、詐欺的なデリバティブ、つまり「将来のリスクマネーを受け取る権利の証券」の、金利0%の借金での買いを増やす。欲望に動かされる人間の性(さが)または業(ごう)でしょう。(以上前書きの部分)
■松山選手の快挙の感想として吉田氏の文章は素晴らしいと感心しています。私には無理です。(笑)松山選手の座右の銘、『才能には限りがあるが、努力は無限である』を知っても感心するだけで実践できない自分に残念な気持ちになるばかりです。<完>
- 登録日時
- 2021/04/20(火) 16:22