【4月の提案】
『人間関係を理解と共感の上につくってはいけない』
■最近続けさまに人間関係はお互いの「理解」と「共感」を前提につくるものではないという意見に出会いました。発信者は神戸女学院大学の内田 樹教授です。私は常々、研修などで受講生に接客や上司と部下の関係において、お互いの信頼関係を形成するには、相互の「理解」や「共感」が重要ですよとお伝えしてきただけになぜなんだろうと興味深く記事を読みました。
■私が当然だと思い込んでいた考え方と異なる意見を提示され、そうかなと疑問を持ちつつそうかもしれないと思うように至ったので、読者の方にも考えていただこうと思い今月の提案といたしました。
■まず私自身が良い人間関係づくりに、お互いの「理解」と「共感」が重要だという検証をあまりしていないことに気づいたのです。どこかで誰かの意見を聞いたり読んだりして、そのとおりだと思い込んで発言をしていたのではないかと反省した次第です。まずは以下の内田教授の発信された内容をお読み下さい。但しこれらの記事は内田教授にインタビューされた方が書かれたものであって、ご本人が書かれたものではありません。
■朝日新聞3月26日付朝刊の「女と男」欄から、インタビュー記事の抜粋です。興味のある方は全文をお読み下さい。
男女関係についての教授の主張は以下のようなものです。
①いまの人が男女関係で苦しんでいるのは愛情の欠如じゃなくて、相互の敬意の欠如じゃないですか。だんなの愛情がなくなったって?なくなったのは敬意なんです。
②肝心なのは人間関係を「理解」と「共感」の上につくってはいけないこと。つくろうとするから、みんなすぐ離婚しちゃう。
③お互いが100%理解し合えるなんて幻である。何を考えているかわからない相手と暮らせて、すごい!と共生できる能力に感動すべきなんです。
④つきあえばつきあうほどに理解できない部分が多いことに気づいていく。
それこそが人間関係の一番深いところじゃないですか。
⑤ずっと一緒にいるから言葉なんかいらないと思ったらダメですよ。どんどん言葉が増えてくるはず。これまで使ったことのないような語彙で語りかけないと。相手のことがわかっているとたかをくくっちゃうのが一番怖いです。
⑥つき合えばつき合うほど相手がわからなくなることこそ人間関係の面白さです。女と男を漢字一文字で表せば「謎」。ミステリーは大事だよ。
■同じ内田教授がNECのメルマガ「wisdom」の3月31日配信号で「上司はえらい!」というタイトルのインタビュー記事で「理解」と「共感」を人と人の関係づくりや共同体のベースにしてはいけないと主張されています。
主な論旨は
①他人を理解し共感することは絶望的に困難であるということを前提にして、理解や共感抜きでも機能するような共同体を設計した方がよい。
②人と人が出会う前に相手について持っている情報なんてごくわずかです。だから最初は相手のことはごく一部分を足がかりにして、だんだんお互いについての理解を深めていく。そういうダイナミックな行程がコミュニケーションの本質だと思います。
③相手が話す何だかよくわからない言葉を忍耐強く聴き続け、何とかして相手の思考回路に同調していく。自分にとっては自明のことだけど、他人には伝わりにくいことを、何とか相手が理解できる言葉に乗せていく。そうやって長い時間と労力を費やして、理解や共感を徐々に獲得していくのが、本来のコミュニケーションなんです。
④「理解」と「共感」のうえに初めてコミュニケーションが成立すると思っている人が多い。そのせいでコミュニケーションの場は忍耐力が逆に欠落してしまっている。理解も共感も出来ない人が自分の傍らに居る状態を苦痛や異常なことだと思うことが間違っている。理解しあい、共感しあっている状態なんて現実には存在しないんです。
以下
1、 組織の中での「報・連・相」は組織のパフォーマンスを確実に落とすことにつながる。
2、部下の理想的なスタンスは、「組織の中でしっかりとした歯車」になること。
3、部下が考えることは2つだけ。
・上司にいかに気分よく働いてもらうか。
・組織内における上司の評価をいかに高めるか。
などなど、面白い主張が続きます。
⑤職場の上司に限らず、自分の近くにいる人間についてはできる限りその能力や資質をオーバーレート(過大評価)したほうがいい。
最も効果的な対人関係の構築法は、その人の最高の美質にピンポイントすることなんです。
■私の常識的な考え方に刺激を与える内容でした。読者の皆様もぜひ会員登録され、全文をお読み下さい。オチも面白いですよ。そして教授の意見を鵜呑みにしないで、ご自分の考えと照らし合わせて対話をしてみてください。
そのうえでそうだと思えば実際にやってみて確かめてみるべきですね。
私は内田教授の意見に一定の「理解」と「共感」を持ったので確かめてみようと思っています。
- 登録日時
- 2008/04/01(火) 11:56