【今月の提案②】
仕事を効果的に行なう能力とは<2>
●前回はドラッカー教授の仕事を効果的に行なうための能力の習慣化について提案をいたしました。いかがだったでしょうか?本で学んだことを自分のものにするための方法として、思考のフォーマット化についても提案いたしました。良い内容のものに触れること、それを自分のものにするための方法を開発することという2つの提案でした。
●次に大切なのは、いうまでもなく「実行」することです。ここに能力開発のハードルがあります。実行をともなわないものは単なる知識に終わります。知っているだけではドラッカー教授の言う「成果に貢献する」という仕事の目的を達成することは叶いません。
●実行したならそれを「成果に貢献する」ようにできるまで、「反省」と「対策」を繰り返すことです。例えば「強みを基盤にする」ことを理解し、自分の習慣にするということは、自分の強みで成果に貢献するまで試行錯誤を繰り返すことだと思います。知識を技能(できる)にするまでには必ず経験が必要です。
●前回ドラッカー教授の教えだけではない視点での、私達が仕事で成果をあげるための能力について提案することを予告しました。それは「(知識・知恵・技術・意欲)×資質と3つのスキル」についてです。
●まず前提として、組織で普通に働く人々の仕事の構造について確認しましょう。私の見識では、どのような組織で働くにせよ仕事の種類は大きく分類して3つではないかと思います。
●ひとつは通常のオペレーション(定型業務)です。これは業種、職種によって様々な定型業務があるでしょう。必要な能力は与えられた役割を果すための知識と技能が中心になります。また多くの人がこのことに多くの時間を割かれているのが現実だと思います。およそ70%ぐらいでしょうか?
●二つ目には定型業務から発生する不具合に対する問題解決です。当たり前のことが当たり前にできないとか、ミスによるクレーム、目標が達成できないなどがその内容です。これに対して適切な対処を行なう能力が求められます。これのウェイトはどれくらいでしょうか?10%でしょうか20%でしょうか?
●三つ目は自ら問題を発見し、解決策を創造して実行していくことです。これについては、組織の中では一番重要度が高くて求められる能力でしょう。上から命令されるから行なうとか、与えられてするのではなく自らが主体的に取り組む仕事です。読者の方のこのウェイトはいかほどでしょうか?少ない方が多いと思われます。一度自分なりに配分をしてみてください。
●これらの3つに分類した仕事ですが、いずれも何のために行なうかといえばその所属する組織の目標の達成に貢献するためですね。そのために必要な能力は何かというのが今回お伝えする内容です。
●まず万人に共通する土台となる能力は知識・知恵・技術・意欲です。そしてそれを支えるのが資質という解釈をしています。その土台のうえにハーバート大学のロバート・カッツ教授が提唱されている3つのスキル、業務スキル、対人スキル、思考スキルをあげています。
●それではひとつひとつの言葉の意味を定義しておきましょう。
●「知識」とは見聞や学習、経験によって知りえた情報、手段・方法、教訓、真理などを言います。
「知恵」とは、ある目的の達成や問題を解決するために必要な情報を駆使し、手段・方法を生み出し考えて行動する力です。
「技術」はある分野の専門的知識に基づく、何かを達成する力です。人に当てはめる場合は実行できる能力として「技能」と表現した方が適切です。
「意欲」はひらたく言えば「やる気と持続力」です。何かを達成しようという「こころの働き」です。
「資質」とは「素養」×「才能」×「気質」です。(スーパーバイザー革命の著者、岩本浩治氏)に同意します。岩本氏は素養について専門スキルを習得するための土台となる基礎学力と社会体験の質、才能は職務ごとのセンス、気質は価値観、性格、個性と表現されています。
●カッツ教授の3つのスキルの意味は、業務スキルが各業種、業態ごとの仕事を遂行していく上で必要な能力、対人スキルは個人、1対1、チームにおける人との関係性を高める力で、核になるのはコミュニケーション能力です。
●思考スキルは正確には「コンセプチュアルスキル」と表現されています。問題を解決するスキル、目的達成に向けて戦略思考や企画力、P・D・Cの実行ができるスキル、組織や制度を構築するスキルなどです。論理的思考といわれるものごとを筋道立てて考え、表現し、実行できる能力なども含まれます。
●カッツ教授はこれらの3つのスキルが組織の中の職位によってウェイトが変化していくという表現をされています。上位の職責者は難しい仕事が求められるため思考スキルのウェイトが高く、下位の職責にあるものは業務遂行を的確にこなすことが重要なので業務スキルのウェイトが高いのだという考え方です。
●現在では必ずしも全ての仕事にあてはまる考え方ではなくなってきています。業界、業種によっては3つのスキルのウェイトはみんな等しくあって、職責によって違うのは内容であるという考えもあります。
●前回のドラッカー教授の5つの習慣であげられた能力は、殆どがコンセプチュアルスキルであり一部で対人スキルが含まれます。そしてドラッカー教授は、人の「資質」について【真摯であること】を最重要視しています。
●ここまで組織で働く人々の仕事の構造とそれを遂行し成果に貢献するために、必要な能力とは何かについて2回に亘り提案してきました。しかしその内容は、そもそも能力とは何かということと、その活用と開発の目的を示すことにとどまっています。
●それぞれをどのように開発していくかという手段・方法・手順については具体的に言及していません。さらに私の思考のフォーマットでいうなら事例の提示にも及んでおりません。
●やはり重要なのは「いかにして」能力を開発していくかを考え出すことです。そのことが思考スキル(コンセプチュアルスキル)でしょう。このあとはドラッカー教授の教えをヒントに、各人で手段・方法を創意工夫されることをお勧めいたします。<完>
- 登録日時
- 2010/05/25(火) 14:41