【今月読んだ本】
「さあ、才能(自分)に目覚めよう」
日本経済新聞社 マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン著
■本書を読むのは今年で4回目です。毎年1回はひもといています。今年は神戸大学の金井教授が書かれた「人勢塾」(4月刊小学館)の第3章に「強み」を生かした組織づくりというのがありました。それをきっかけに今年も目を通すことになりました。
■そのなかで、経営コンサルタント小屋一雄氏が本書のストレングスファインダーの提供会社に所属をされていた関係で、この本の内容を紹介されています。金井教授との対談もあります。人勢塾は「ポジティブ心理学」による人と組織の活性化を研究されている活動です。こちらもお勧めです。
■そこで今月は同書(約350P)を私なりに要約したものをご紹介いたします。本書の醍醐味は、ストレングスファインダー診断を行い、自分の才能について確認することです。その診断結果はポジティブで私達をがっかりさせるようなことはないと思います。
■私はミニ研修などでこの診断結果をもとに、5つの課題を出して受講生に仕事と強みとの関係で掘下げていただくことにしています。本文を読まれて興味が湧かれた方はぜひお問い合わせ下さい。
■ 本書のテーマは読者に対して「強みを活かす」人生が必要だと提唱していることです。欠点を克服するのに汲々とならず、1人ひとりが必ず持っている「才能」を磨いて「強み」にしろという主張が基軸になっています。
■ 米国のいろんな企業組織でのマネージャーに対する調査の結果、2つの誤った認識が大勢を占めているそうです。(はじめにより)
1、人はだれでもほとんど全てのことにおいて平均した能力を発揮することができる。
2、誰にとっても最も成長の余地があるのは、その人の一番弱い分野である。
これに対し著者らは成功しているマネージャーの認識は、以下のものだと対比して「問題提起」をしています。
1、人の才能は1人ひとり独自のものであり、永続的なものである。
2、成長の可能性を最も多く秘めているのは、1人ひとりが一番の強みとして持っている分野である。
日本ではどうなのかはわかりませんが、私たち多くの日本のビジネスパースン(特に大きな組織の中で働く人たち)は、自分の強みで仕事をしているのにもかかわらず、少しうまくいかないと「弱み」を指摘され、その克服に意識が行ってしまって、強みを伸ばそうという努力が少なくなってしまうのではないかと思われます。
■ 本書では、強みを伸ばすために強みの定義を行い、何を強みにすべきかについて「才能・知識・技術」をあげ、それぞれの定義とともに、その認識方法、特定方法、表現方法を具体的に述べています。(32Pより)
この考え方は、マネージャー本人もさることながら、部下や上司、同僚に対する見方、あるいは自分たちのビジネスそのものにも適用ができます。
【強みの定義】
「強みとは常に完璧に近い成果を生み出せる能力」
逆に「弱点とはすぐれた成果を得るのに妨げになるもの」として
いる。
【才能の定義】
才能とは、「無意識に繰り返される思考、感情、行動のパターン
であり、何かを生み出す力を持つ資質」である。
・才能となるさまざまな資質、それは<ストレングス・ファイン
ダー>で見つけて欲しい。(本書を買えば確認することができま
す)
【知識の定義】
「知識とは、学習と経験によって知り得た真理と教訓である」
・知識には事実に基づく知識と経験によって身につく知識の2つ
がある。
【技術の定義】
「技術とは、行動のための手段である→何かができるということ」
・技術は仕事をする上で役に立つが、目覚しい成果が得られると決まったも
のではない。(技術より技能といった方が良いかもしれません)
「才能」「知識」「技術」この3つが組み合わさって初めて『強み』が生まれるという。すなわち、ストレングス・ファインダーで確認された5つの資質を信じ、そのうえに得意の分野での知識と技術に磨きをかけ、仕事で成功しつつ自分の強みを本物にしていくべきだという提案です。
■ 定義で意味を理解せしめたあとに
強みを中心に据えた人生を築くには何が必要かという「方法」を3つ観点で
述べられています。(36Pより)
1、天性の才能か、後天的な能力かを見分ける方法を知ることだ。
2、才能を特定するシステム
ストレングス・ファインダーはあなたがどんな人間で、何に強く、何に弱 いかがすべてわかるわけではない。資質に焦点を絞り、あなたの中で優位を占める5つの資質を発見することを目的としている。しかし、それらの資質はまだ強みとは言えない。潜在能力を活かせる分野、世界に通じるような強みが築ける最も可能性が高い分野を示しているだけだ。あなたの5つの資質にスポットライトを当てる。そこから先はあなた次第だ。
<ストレングス・ファインダー>の目的は診断した<強み>を被験者に植え付けることではない。「強みになりうる最も優れた潜在能力の源泉を見つける」ことだ。(92P)
3、才能を表す共通の言語
強みを表す言葉は乏しい。弱みを表す言葉は豊富にある。
■ 本書は人間そのものではなく、人間の資質を分類し、その組み合わせから われわれ1人ひとりの特殊性、個性を数理的に立証しているところが極めて独創的です。なんといっても34の資質のうち5つの資質がまったく同じになる確率は3,300万分の一だそうです。
この結果をどう受け止め、どう解釈するかは個々の問題で、そこにも個性が
現われるはずだという。
また5つの資質の順位にはあまり重きを置かないで欲しいという。理由は5つの資質とその他の間には区別は必要だが、5つの間には大きな差はないという。
もう一点、注目すべき記述は、ほとんどすべての職務について最低限要求されるという行為というものがある。それは、自分の意見を相手に伝える、相手の話に耳を傾ける、約束をたがえない、自分の行動には責任を持つなどだ。
もし優位を占める5つの資質に、<コミュニケーション><共感性><規律性><責任感>のどれもなかったら、少しでもよくなるようにただひたすらがんばるしかないだろうと言っていることです。
自分の強みを活かすために、上記の4つの欠如が障害になるのを防ぐには、①少しでもよくする②サポートシステムをつくる③才能の力で弱点に打ち勝 つ④パートナーを見つける⑤とにかくやめてみるという5つの戦略を提唱している。(216Pより)
■ 強みを生かすマネジメントとは、各人の強みを尊重するのだが、それが最終目的ではない。組織やチームの『ビジネス目標を達成するために』メンバーそれぞれのユニークな才能をフルに使おうというのが強みのマネジメントの目的なのである。
■そのためには、各人にはできる限り仕事のプロセスには自由を与える。自分で自分をコントロールしているという実感を持たせ、当事者意識でもって目標達成に向かわせることが大事である。すなわち多くの企業の経営者が求める理想の人材の条件である『主体性の発揮ができる人材』の必要性を説いているのです。
■ちなみに私のストレングスファインダー診断の結果における上位5つの資質
は、【自我】【着想】【最上志向】【親密性】【責任感】です。読めば元気が出てくる内容でした。<完>
- 登録日時
- 2010/05/26(水) 10:37