▲晩秋の紅葉 緑色に黄色、黄緑色、橙色から赤色へと混在するこの時期の自然が好きです。人生の黄昏時を迎えているからでしょうか。
【2012年11月の提案①】ビジネスパーソンの能力地図づくり<11>
組織開発におけるソーシャルスキルとは⑨
インターグループスキル<後編>
● 前回の続き
●「ソーシャルスキル」の特徴はスキルを『空間軸』の視点で捉えていることでした。
それは5つの要素で構成されています。その5つとは、①パーソナルスキル(本人自身) ②インターパーソナルスキル(1対1の関係) ③グループスキル(小集団の関係) ④インターグループスキル(複数のグループ間の関係) ⑤組織行動スキル(組織全体を対象にする場合)です。
● 今回のテーマは「インターグループスキル」の続きです。前編を書いてから40日以上経ちます。少し間が空きますと書く事が苦手な私は筆が鈍ります。年内には完結したいので重い腰を上げました。(笑)ご笑覧ください。
● 前編を再度お読みいただいてから今回のコラムを読まれることをお勧めいたします。前編の最後に以下のように書いて結びました。「実習で学んだこと、その後の人生できづいたことを、スキルとしてどのようなものになるのかを次回にまとめとして書きます。」以下、まとめです。
● Ⅰ、インターグループスキルの体験学習で何を学んだか、ひとつは資料:グループ間が競争状態になった時、から一部抜粋します。
● 他のグループと競争状態になると【グループ内】で置きやすいこと。それは・・・
◎ 他のグループを敵としてみる傾向が強まり、メンバーのあいだにグループへの「忠誠心」が高まり団結は強まる。
「平気で嘘をつく人たち」という本にも書かれていますが、「集団の凝集性を強化する最善の方法が、外部の敵に対する憎しみを助長することだ、とはよく知られていることである。敵とみなす集団の欠点や罪に関心を向けることによって、グループ内の欠陥は容易に、なんの痛みもなく看過される。」
● この特徴は、自ら率いるチームを良い方向に向かうように活用されるならいいんですが、まずいのは内部の弱点が見過ごされやすいことです。他のグループの弱点は見つけやすくなるのですが、自分たちのことは良いところのみ重視することが多くなります。
● 私は小売業で仕事をしていましたので、競合店を敵とみなして自店の結束をはかりました。その際には相手の弱点、強みの両面を見るように促しましたが、ウェイトは弱点7割、強み3割を目安にするよう方針を出しました。理由は、人間は他人の弱点の方が見つけやすいからです。
● それを自分たちの強みで叩けというのが勝つ法則です。勝てば心理的に優位になり勢いがつきます。勝ってから自分たちの弱みに目を向けさせることです。それもお客様にとって致命的なものでなければ急ぐ必要はありません。
● それに当時は悪いところを自分たちで気づかせる前に、私が指摘することが多かったですね。私にも傍目八目能力でよく見えたのです。そのポイントは「お客様にとってどうなのか」という視点で指摘することでした。これはメンバーが意外と自分たちでは気づかないことだったのです。
● このことは私が組織の内部の人間として、上司という立場からとった行動です。そこではうまく働いたのですが、コンサルタントとして現場指導などで指摘する時は、最初は上手くいきませんでした。経験からの結論を申し上げますと、良いところ7割、改善すべきところ3割にしないと抵抗を受けることが多いと思います。このことはまた別の機会に述べましょう。
◎【グループ間】で起きやすいこと。
・相互関係とコミュニケーションが減少する。グループは他のグループを観察するとか、理解しようとしたがらなくなる。また相手に対する不十分な情報で決め付けてしまうようなことが起こる。
・全く協働しなくてもよいグループ同士なら問題は少ないが、少しでも協働する方が効果的な組織の場合はマイナスになる。小売業の経験では、大型店舗のフロアの違う売場同士のコミュニケーションの悪さがお客様の不満につながることがありました。また販売部門と配送や工事部門との関係ではしばしばお客様からのクレームの原因となったものです。
● 研修の場での記憶ですが、グループごとに話し合いをするセッションである
グループが、競争状態が高まってくるにつれて、自分たちの部屋の中に仕切り
を建て、外から見えないようにして討議していたのが思い起こされます。
(勿論このグループは最終的には学習効果が上がりませんでした。)
● Ⅱ、【グループ間】でのフィードバックやミックスグループでの話し合いで学んだこと。
◎個人に自己概念があるように集団にも自己概念がある。自己概念=自分たちのグループはざっくばらんな話し合いができるとか、目標達成への執念が強いとかという自己認識。
・心理学で「ジョハリの窓」というのがあります。自分で自分をどのように認識しているか、ということと気づいていない自分を横軸に、縦軸には他人から見て見える自分と他人も気づいていない自分を設定します。そうすると4つのマトリックスのボックスができます。これを4つの窓に見立ててそれぞれ命名がされます。
・自分も他人も認識が一致している自分については「開かれている窓」、自分は気づいていないが周りから見える自分は「気づいていない窓」、自分はわかっているが周りに知られないように秘密にしているのを「閉ざされた窓」、どちらも気づいていないのを「誰も知らない窓」といいます。
・これを個人だけでなく集団にも使えるということです。「開かれている窓」で見えることをフィードバックされると、自分たちの自己概念に合っているのでいいところを見ているなという反応になります。(これに対しては受けたグループには行動の変化は起こりません。)
・「気づいていない窓」から見える自分たちで気づいていないことは真実がそうであっても受け入れないという反応になりやすい。
・また真実がそうであると薄々気づいていたことでも、競争状態になっているグループからのフィードバックは歪曲しやすい。ことによれば競争グループからの見解だと言って反対することもある。
● 組織では事実(真実)はどうあれ相手の認知で反応するのである。1対1の
人間関係(コミュニケーション)も同じで自分(自分たち)がこうであるから
と思っても、相手にそのように受け止められないと思うようには動かない。
● このことは多くの方が現実に体験されていることでしょう。グループ間では、
両方のグループが混合になって話し合うことが必要です。その時に、お互いの
グループで、相手をどのように認識しているか、相手からのフィードバックを
どのように受け止めたかを、「内容」と「感情」の両面で、文章やデータ化して
持ち寄ることが効果的です。(模造紙に書くとか)
● ここまでのセッションで印象に残った学びは、「内容」面だけを重視するの
ではなく、集団討議の「プロセス」やメンバーの「感情」面に着目することで
す。
メンバーは今そこで討議しているテーマ、課題とその達成手段などに関心が行
きがちですが、今そこで起こっているプロセスや人の感情の動きには気づく人
は意外と少ないのです。
● リーダーは内容面のコントロールだけでなく、プロセスや感情面にも注目し
観察して問題点を把握する必要があります。そして、対処すべきことには見て
見ぬふりをするのではなく手を打たねばなりません。そうしないと自分のグル
ープはチームにはならないでしょう。
● このことを学んだおかげで私は随分とうまくマネジメントができたように
思います。但し、部下や受講生たちが私の言動をどのように受け止めていたの
かは、わからない部分もあります。
● もう一つは「ジョハリの窓」をマーケティングに応用したことです。店が
お客様からどのように見られて(期待されて)いるのか調べ、自分たちの訴求
したいこととの一致を拡大することです。「開かれている窓」を大きくすること
が小売店の役割です。
● 図表はそのために使ったお店の問題点発見のためのシートです。(図表をク
リックしてご覧ください)ご活用はフリーです。<完>
- 登録日時
- 2012/11/20(火) 15:37